米国では、二大政党の意見が分かれる社会的な争点において、企業が旗色を鮮明にする事例が増えている。移民問題や人種格差などの論点では、民主党に近い態度を表明する場合が目立ち、これまで親密だった共和党との関係が微妙になっている。企業にとって必ずしも望ましい展開ではないが、もはや米社会は企業に沈黙を許さないのが現実なのだ。(みずほリサーチ&テクノロジーズ 首席エコノミスト安井明彦)
選挙制度改革で民主党に同調
米企業の変化に苛立つ共和党
「企業が極左の暴徒の手先となり、憲法の秩序を逸脱して、この国を乗っ取ろうとするのであれば、その影響は深刻だ」
4月上旬に発表した声明で、上院共和党のリーダーであるマコネル議員は、強い調子でビジネス界への不満をぶちまけた。共和党がジョージア州などで推進していた選挙制度改革に、多くの米国企業が反対を表明していたことへの憤りである。
米国では、各州で進められている選挙制度改革が、二大政党の厳しい対立の舞台となっている。ジョージア州などで共和党が主導する改革は、郵送投票の手続きを厳格にするなど、不正の防止に力点を置く。これに対して民主党は、黒人などの投票を難しくし、選挙結果を共和党に有利に動かす狙いがあるとして、こうした改革を厳しく批判する。
民主党のバイデン大統領も、ジョージア州の選挙制度改革を「21世紀のジム・クロウ(かつて南部諸州に存在した人種差別的な法律の総称)」と形容し、厳しく糾弾している。