バイデン氏勝利を喜ぶ市民
バイデン政権の経済政策のキーワード「人種間の公平」は、実現できるのか(写真はイメージです) Photo:123RF

バイデン政権が発足して、1ヵ月が経過した。経済政策のキーワードとして浮上してきたのが、「人種間の公平」(Racial Equity)だ。「平等」(Equality)という言葉が使われていないのは、バイデン政権が国内で幅広い支持がある「機会の平等」の実現にとどまらず、論争含みの「結果の平等」を視野に入れている証左である。実は、過去に遡った構造的な格差への取り組みは、人種間の対立を激化させるリスクをはらむ。(みずほ総合研究所 調査本部 欧米調査部長 安井明彦)

米国の根深い人種間の格差が
大寒波で浮き彫りに

 米国南部を、歴史的な大寒波が襲っている。テキサス州では大規模な停電が発生し、企業活動や住民の生活に大きな被害が生じた。

 注目されているのが、人種による影響の違いである。寒波や停電の被害は生活インフラがぜい弱なコミュニティで大きく、そうした地域の住民には黒人やヒスパニックが多い。家屋の断熱性にも劣り、白人の多い裕福なコミュニティとの格差が、命にかかわる問題になっている。賃金水準の低い家計ほど、寒波で仕事に通えない打撃は大きく、資金面での貯えにも余裕がない。被災からの立ち直りには時間がかかるだろう。

 米ワシントンポスト紙は、テキサスの状況を「高層住宅や高級ホテルが立ち並ぶ都心部に煌々と明かりが輝く一方で、近隣のコミュニティは暗闇に覆われ寒さに震えている」と描写する。まるで「深く染みついた格差(同紙)」が、そのまま視覚的に立ち現れているようだ。

 人種による格差が鮮烈に顕在化したのは、コロナ禍も同様である。感染拡大の初期段階から感染者や犠牲者に占める黒人やヒスパニックの割合は人口対比で高かった。リモートワークに適さず、感染に脆弱な産業に従事する割合が高かったことなどが理由である。2020年前半時点の黒人と白人の平均寿命の差は約6年となり、2019年の約4年から大きく拡大した。

 最近でこそ感染面での人種の差異は縮小してきたが、これは中西部などの白人比率が高い地域で感染が拡大したからに過ぎない。むしろ今度は、ワクチン接種の進捗について、黒人やヒスパニックでの遅れが問題視され始めている。政府に対する不信から、特に黒人にはワクチンの接種に懐疑的な傾向があるが、オンラインなどでの情報収集に長け、通信インフラや予約を調整する時間的な余裕といった点では、やはり白人が有利であるようだ。