「1人での集中時間」をどこで過ごすか

それでは、それぞれの場所は、どんな変化をしていくのでしょうか。

まず、仕事のためのすべての機能が1ヵ所に集まっていたオフィスビル(セカンド・プレイス)は、その機能を一部だけ残して縮小します。

通常業務的なインフラは、自宅(ファースト・プレイス)に分化していき、非日常を演出してくれる仕事場という機能は、それ以外(サード・プレイス)に新設されていくでしょう。

「1人で集中する時間」を軸に考えると、基本的には自宅やサード・プレイスで時間を過ごし、それ以外の機能をオフィスに残すようになるでしょう。

よって、自宅を中心とした生活スタイルが基本となっていきます。

「働きたくなるデザイン」が選ばれる

ここで、前項のサード・プレイスの説明をさらに掘り下げましょう。

この先、副業や複業が解禁される流れは止められません。すると、いらないオフィスの機能がより明確になってきます。

法人が個人に提供していたもの、それは、「ミッション(Mission)」と「ファシリティ(Facility)」だった時代がありました。

つまり、あなたがやるべきこと(ミッション)と、そのための施設(ファシリティ)です。

しかし、その「ファシリティ」がなくなっていきます。

副業や複業をする個人から見ると、A社からもB社からも仕事を受けることが常態化するため、常時いるべき場所は不要になってくるからです。

これまでは1つの法人と1人の個人の関係だけだったのが、これからは他の法人からも1人の個人に「ミッション」と「ファシリティ」が与えられるようになります。

そうすると、あなたは、「空間」を選択することができるようになります。

あえて悪い表現をすると、これまでのオフィスの内装やオフィス家具は、ただの総務の人が決めていました。

「うちの会社は、なんでこんなイスなんだろう」「デザイン的にも機能的にも微妙で、自分だったら絶対に選ばないんだけど……」などということがよくあったでしょう。

このような「ファシリティ」を選択する主体が、総務の人からあなた自身に移るのです

サード・プレイスは、たとえばスターバックスのような、個人が気持ちよく過ごせる場所が勝ち残っていくでしょう。

場所は、演出能力が成功要因そのものになっていきます。

以上、働く空間がどうなっていくかについて、3つのキーワードを説明してきました。

さらに個人がどうしていけばよいかについては、本書で詳しく解説します。

井上一鷹(いのうえ・かずたか)
株式会社ジンズ執行役員 事業戦略本部エグゼクティブディレクター 兼 株式会社Think Lab取締役
NewsPicksプロピッカー(キャリア)。
大学卒業後、戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトルにて大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事後、ジンズに入社。商品企画部、JINS MEME事業部、Think Labプロジェクト兼任。算数オリンピックではアジア4位になったこともある。
著書『深い集中を取り戻せ』(ダイヤモンド社)が好評発売中。