マケドニアという名称は、世界史でおなじみのアレクサンドロス大王が君臨した古代のマケドニア王国に由来する。しかし、マケドニア共和国は古代王国の領域の4割に満たず、5割を現在のギリシャが占有している(残り1割はブルガリア)。また、ギリシャ人はいまも国の北部をマケドニア地方と呼んでいる。さらにアレクサンドロス大王はギリシャ人だが、現在のマケドニア国民の多くはスラブ人である。

 そうした理由から、ギリシャは「現在のマケドニアがマケドニアと名のるのはおかしい」「領土的野心の表れではないか」「国名を変更しろ」などと主張したのである。

 ギリシャの猛抗議にマケドニア共和国は抗弁しきれず、1993年に「マケドニア旧ユーゴスラビア共和国」へと変更した。

ギリシャの怒りは
国旗をも変えさせた

 ギリシャはマケドニア共和国の国旗にも難癖をつけた。

 かつてマケドニア共和国の国旗には、16本の光を放つ星が描かれていた。マケドニア王国の紋章「ヴェルギナの星」をモチーフにしたものである。

 これに対してギリシャは、「現在のマケドニアがマケドニア王国の紋章を国旗にするのはおかしい」と主張。国連の仲介により、1995年にヴェルギナの星を廃して太陽のデザインへと変更することになった。

 こうしてマケドニアは国名に引き続き国旗も変えたわけだが、ギリシャの怒りはおさまらず、2019年に「マケドニア旧ユーゴスラビア共和国」から「北マケドニア」へ国名の再変更を強いられた。しかし、まだ「マケドニア」の名が残っているため、ギリシャが抗議を止めるかどうかははっきりしない。ギリシャの怒りは想像以上に激しいのだ。