「社会貢献活動してます」に
魅せられた学生の末路

「イメージというか、認識が甘かったです」――。

 このように話してくれたのは、新卒で太陽光エネルギー関連の会社に就職した黒岩君(24歳)です。

 大学では地域再生などを学び、ボランティア活動にも力を入れてきました。なので「社会貢献したい」との想いを最優先に就職先を決定しました。決め手はホームページの「社会貢献宣言」に目を奪われたことと、地域に密着した取り組みに深く共感したことにありました。

 しかし、入社後ほどなくして違和感を覚えるようになりました。

 それは、彼自身、「社会貢献の実感がわかない」ということでした。営業職として先輩に同行していたときは、まだ営業そのものが新鮮で充実していたのですが、独り立ちしてからは「だんだん余裕がなくなってしまった」そうです。

 というのも、独り立ちしてからは「常に数字しか頭にないような状況」になってしまったからだそうです。とてもじゃないが、入社前に思い描いていた「地域に貢献している企業の一員」という景色にはなかなか巡り合えず、それを思い出すこともなくなっていったそうです。

 また、その会社は、確かに、会社周辺の清掃の取り組みも行っているのですが、そこでも想像との乖離が大きかったようです。学生時代に見た会社のインスタでは、多くの社員が仲良く楽しそうに清掃をしていたので、「会社を挙げて取り組んでいる」と思っていたそうです。

 ところが、実際には会社はあまり関与せず、いつのまにか社員の自主性に任された活動となっていたそうです。しかも、積極的に清掃をする社員があまりいなかったせいか、自主性とは建前で、事実上は半強制的にボランティアをせざるを得ない状況でした。中でも黒岩君をはじめとした新卒社員は、当然のごとく「社会貢献活動を押し付けられていた」とのことです。

 こうなってくると、いろいろなところに目がつくようになってきます。

 例えば、先輩に「新人だから当たり前」と半強制的にやらされている清掃に給与が支払われないことや、営業職には残業手当が支払われないことなどです。

 何よりも彼にとって予想外だったことは、病気で欠勤したときに、欠勤した分の給与を控除されたことでした。私が「それは当たり前でしょう?何で控除されないと思っていたの?」と聞くと、「社会貢献活動をしているのだから社員にとってもっと優しい会社だと思っていた」そうです。