私はずっと聞き役に徹して、なるべく早く切り上げるようにしていたのですが、マミさんは「私も恥を忍んで、少しでも調査の助けになるかと思い話しているのだから、片岡さんも性癖など話してほしい」と要求してくるようになりました。

 これまでの経験上、これはマズい兆候だと判断しました。そうしたときは、はっきりと「あくまで依頼者と調査員という業務契約上の関係であり、プライベートの共有は調査に有用性はありませんので、お断りさせていただきます」と伝えるようにしています。

 マミさんは冷静になり、「何でも話せる間柄と勘違いしてしまった、今後は関係を尊重する」と約束してくれました。

 その後、調査は順調に進み、旦那さんの浮気の証拠を捉えることができ、調査報告をまとめて案件は完了。その結果、マミさんの希望する形で離婚が成立したと、感謝の言葉とともに連絡がきました。

 これは3年前の話ですが、実は今でも「あの時のお礼がしたいから食事でも」という誘いが月に2回は来ます。もちろん丁重にお断りしています。

依頼者が勘違いして「特別な存在」に
依頼者と結婚する探偵も

 これは「探偵あるある」ですが、依頼者が人には話せない秘密を、探偵にしばしば打ち明けてくれることがあります。

 その内容は、たわいもないことから性癖や、犯罪に関わる可能性がある、墓場まで持っていくレベルのことまで多種多様ですが、探偵には守秘義務があるため、依頼者の心のたがが外れてしまうのだと思います。

 そこから勘違いして特別な存在だと認識されて、必要以上の関係を求められることがありますが、毅然とした態度で断らないと、どこまでも依存してくる依頼者がいるのです。

 中にはそういった依頼者と、結婚にまで発展する探偵さんがいることもまた「探偵あるある」です。

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