組織が抱える慢性疾患の例
この慢性疾患になぞらえて企業や組織の問題を考えてみると、日常的な問題によく当てはまります。
・イノベーション関係の取り組みへの他部門の協力が得られない
・新しい事業アイデアを出そうとする人がいない
・会議で誰も発言しない
・納期の遅れが常態化している
こうしたことは、組織内でよくあるにもかかわらず、変革の対象としてあまり議論されてこなかったように思います。
実際、これまでの多くの企業変革に関する議論は、経営陣が中心となった抜本的に経営を立て直すための変革論がほとんどではないでしょうか。
たとえば、赤字事業からの撤退、経営危機からのV字回復を目指したターンアラウンド(事業再生)などです。
いわばこれは急性疾患の変革論ですが、日常のほとんどの状況には当てはまりません。その結果、日常の慢性疾患的な問題には、手がつけられていないのです。
本書では、組織の日常で生じる様々なやっかいな問題を慢性疾患というメタファーで理解を深め、セルフケアの実践という日常の変革論を考えていきたいと思います。
そこで、まずは組織の慢性疾患とはどんなものか、次回、もう少し整理しておきましょう。
【追伸】「だから、この本。」についても、この本について率直に向き合いました。ぜひご覧いただけたらと思います。
【「だから、この本。」大好評連載】
<第1回> あなたの会社を蝕む6つの「慢性疾患」と「依存症」の知られざる関係
<第2回>【チームの雰囲気をもっと悪くするには?】という“反転の問い”がチームの雰囲気をよくする理由
<第3回> イキイキ・やりがいの対話から変革とイノベーションの対話へ!シビアな時代に生き残る「対話」の力とは?
<第4回> 小さな事件を重大事故にしないできるリーダーの新しい習慣【2 on 2】の対話法
<第5回> 三流リーダーは組織【を】変える、一流リーダーは組織【が】変わる
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経営学者/埼玉大学 経済経営系大学院 准教授
1977年、東京都生まれ。2000年、立教大学経済学部卒業。2002年、同大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。2006年、明治大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得。
2006年、早稲田大学アジア太平洋研究センター助手。2007年、長崎大学経済学部講師・准教授。2010年、西南学院大学商学部准教授を経て、2016年より埼玉大学大学院人文社会科学研究科(通称:経済経営系大学院)准教授。
専門は、経営戦略論、組織論。ナラティヴ・アプローチに基づいた企業変革、イノベーション推進、戦略開発の研究を行っている。また、大手製造業やスタートアップ企業のイノベーション推進や企業変革のアドバイザーとして、その実践を支援している。著書に『他者と働く――「わかりあえなさ」から始める組織論』(NewsPicksパブリッシング)がある。
日本の人事部「HRアワード2020」書籍部門最優秀賞受賞(『他者と働く』)。2007年度経営学史学会賞(論文部門奨励賞)受賞。