イキイキ・やりがいの対話から<br />変革とイノベーションの対話へ!<br />シビアな時代に生き残る<br />「対話」の力とは?

宇田川元一氏の前著『他者と働く』から1年半。今、書店で話題となっている新刊『組織が変わる――行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2 on 2』を読んだ読者から、熱狂的な感想が届いている。
組織にはもっと対話が必要だ。
前著でも、そのメッセージを発してきたが、「そもそも、何のために対話をするのか」というところでは、誤解されている部分も多い。
特に最近は「やりがいを感じられるようになるため」「みんなと仲よくなって、職場の環境をよくするため」「居心地をよくすることが大事」という文脈で語られることも多くなった「対話」や「組織開発」。しかし、「対話にはもっと変革的な力がある」と宇田川氏は指摘する。「組織における対話とは何か」。その本質をとことん聞いてみた。
(構成・イイダテツヤ、撮影・疋田千里)

イキイキ・やりがいの対話から<br />変革とイノベーションの対話へ!<br />シビアな時代に生き残る<br />「対話」の力とは?宇田川元一(Motokazu Udagawa)
経営学者/埼玉大学 経済経営系大学院 准教授
1977年、東京都生まれ。2000年、立教大学経済学部卒業。2002年、同大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。2006年、明治大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得。
2006年、早稲田大学アジア太平洋研究センター助手。2007年、長崎大学経済学部講師・准教授。2010年、西南学院大学商学部准教授を経て、2016年より埼玉大学大学院人文社会科学研究科(通称:経済経営系大学院)准教授。専門は、経営戦略論、組織論。ナラティヴ・アプローチに基づいた企業変革、イノベーション推進、戦略開発の研究を行っている。また、大手製造業やスタートアップ企業のイノベーション推進や企業変革のアドバイザーとして、その実践を支援している。日本の人事部「HRアワード2020」書籍部門最優秀賞受賞(『他者と働く』)。2007年度経営学史学会賞(論文部門奨励賞)受賞。

──今、多くの組織で「対話が必要」という意識は広まっていると感じます。

『他者と働く』がたくさんの人に読まれたのも一つの証明だと思いますが、現代ではなぜこれほど「対話の必要性」が叫ばれているのでしょうか?

宇田川元一(以下、宇田川):組織で働く人の多くが、「コミュニケーションに課題がある」「部下ともっと対話したほうがいい」と感じているのは確かだと思います。

 しかし、考えてみれば当たり前ですよね。

 日本の企業がイノベーティブだった時代は1970年代から80年代。当時、経済学の世界的なホットトピックは「日本的経営」だったわけです。

 ちなみに、あの時代は日本的経営の研究から企業文化論が出てきた頃でもあります。要するに、企業は戦略だけでなく、文化でも動いているよね、ということが認識され始めた時代です。

『ジャパニーズ・マネジメント』(深田祐介訳、1981年、講談社)、『エクセレント・カンパニー』(大前研一訳、1983年、講談社)、『シンボリック・マネジャー』(城山三郎訳、1983年、新潮社)など、あの頃の本を読んでいると「日本企業のような強い文化をアメリカでも持てるだろうか」という議論がさかんに行われていました。