日本にとっても、日米韓協力の見地から、韓国との関係を見直すことも視野に入れなければいかないと考えていた矢先、文大統領から出てきたのが冒頭の二つの発言である。米国はこれをどう評価するのか。日本は米国との緊密な話し合いが必要になってきた。

文大統領の発言は
米国に誤解を与える恐れ

 梨花女子大学の朴仁フイ(パク・インフィ)教授はボアオ・アジアフォーラムとNYTでの文大統領の発言について、中央日報で下記のような感想を語っている。

「(NYTのインタビューが掲載される)前日、(ボアオ・フォーラムで文大統領が)中国に親和的メッセージを出したのと比較し、米国に対するメッセージが攻撃的に受け止められる側面がある」「特に(2018年の米朝首脳会談による)シンガポール合意を履行すべきという警告は、あたかも会談決裂のすべての責任を米国に転嫁しているとみなされる余地がある」「バイデン大統領も北朝鮮との対話の必要性を知っている状況で出たこうしたメッセージが、米国に不必要な誤解を与えないか憂慮される」

 中国は、日米韓離間を画策して、文大統領をボアオ・フォーラムに招いたものである。同フォーラムに出席した国は、ほとんどの国が非同盟国であり、韓国が唯一の米国の同盟国だ。

 このフォーラムにはニュージーランド(以下“NZ”)も出席していたが、それは新型コロナウイルスの発生源の調査をめぐりオーストラリアと中国が対立し、米国がオーストラリアを支援する中、「ファイブアイズ」(相互諜報同盟を結ぶ米、英、加、豪、NZ)に属するNZを引き離そうという中国特有の「離間の計」の一環であろう。

 米国が同盟友邦との連合を通じた中国けん制方針を決めた中、中国が米国の同盟の弱点である韓国とNZの取り込みを図ったということであろう。韓国はこれに乗せられ、中国に対する親和的、宥和(ゆうわ)的メッセージを発したのである。

中国を喜ばせた
文大統領の発言

 ボアオ・フォーラムは、中国が主導する「アジア版ダボス会議」である。例年、アジアを中心とした政財界の要人たちが集まるが、今年は新型コロナの流行により非対面で開催された。

 その主題は「グローバル大変化」である。だが、副題は「グローバルガバナンスと一帯一路の強化」、つまりは中国を中心とした国際秩序の再編計画である。