韓国もそれを気にしてか、青瓦台の報道資料には副題は省かれていた。また、文大統領が同フォーラムに参加することを発表したのは、開会式のわずか1時間前だ。同フォーラムへの参加で米国が不快な思いをすることを気にしたのであろう。

 それでも開会式のメッセージは中国を喜ばせる内容に満ちていた。文大統領がその開会式に送ったメッセージの要点は次の二つである。

 第一は「アジアの役割」を強調したことだ。

 文大統領は「アジア諸国はボアオ・フォーラムを通じてお互いの違いを認め、共同の利益を追求する求同存異の精神を実践してきた」とし「求同存異は包容と共存の道であり、人類共同の危機であるコロナを克服する上でも重要な価値であり原則だ」と述べた。「求同存異」は習近平主席が外交政策を説明する代表的な四字熟語である。

 だが、バイデン大統領は、中国を「法・規範をかく乱する行為者」と述べ、同盟国・友好国と力を合わせて中国がグローバルガバナンスに従うよう圧力をかけている。

 また、中国は新疆ウィグル自治区や香港などで人権を蹂躙(じゅうりん)し、香港の民主主義を抑圧して中国の支配を固めようとしている。さらに台湾に対してもいつ実力行使に出るか懸念される状況が続いている。習近平主席は「他国の内政に干渉するのは、いかなる支持も得られない」とくぎを刺している。

 文大統領の発言は自由民主主義国との違いを容認し、そうした中国の行為を黙認するとの発言にも受け取れる。それは米国が進める「ルールに基づく国際秩序」への離反行為である。

 第二は「新技術分野でのアジア諸国間の協力の強化」を主張した点である。

 文大統領は「コロナによりグローバルバリューチェーンが再編され、生産・供給システムのデジタル化が速くなり、技術の発展と革新に対する要求がさらに強まっている」「新技術分野でアジア国家間の協力が強化されれば、未来をリードし、危機への対応でも重要な役割ができるはずだ」と述べた。

 米国は中国の中核産業と連結している現在のグローバルバリューチェーンを無力化し、米国中心の新しい枠組みを構築しようとしている。

 先の日米首脳会談でも、デジタル分野の競争力を強化し、5Gと次世代モバイルネットワークなど情報通信技術を進展させるため、米国は25億ドル、日本は20億ドルを出すことに合意した。