5月末に予定される米韓首脳会談でも米国はこうした新技術分野での韓国との協力を要請する可能性がある。しかし、文大統領の訪米を前に中国との協力に言及したことは米韓協力の余地を狭めることになりかねない。韓国を通じて新技術が中国に流れる危険性が増すからである。

 米国は、新しい国際秩序と経済秩序の主導権を巡って中国と戦略的な競争をしているのである。韓国はその本質を読み取りどちら側に立つべきか真剣に考えるべき時に来ている。

バイデン大統領に対し
文大統領は2つの注文

 文大統領は21日のNYTに掲載されたインタビューで、北朝鮮との対話と中国への対応について米国に注文を付けている。

 第一に朝鮮半島の「非核化(北朝鮮とは言わず)は韓国の生存にかかわる問題」であり、「1日も早く(米朝が)向かい合って座ることが問題解決の最も重要な出発点」であるとし、北朝鮮と即刻対話するよう促した。

 そして対話が再開されたときの対応についても、2019年のハノイ米朝会談が失敗に終わったことを振り返り「それを土台にしてより現実的な方策を探せば、米朝の双方が解決策を見つけることができるだろう」「米朝が譲歩と見返りを同時にやりとりし、漸進的・段階的に非核化に向かって進まなければならない」「互いに信頼できるロードマップを考案することがカギになる」と述べた。さらに2018年のシンガポール合意を破棄すれば失敗すると「警告」した。

 また、文大統領は「トランプ前大統領が史上初めて米朝首脳会談を開催したのは確実に彼の成果」としつつも、トランプ前大統領の努力は「ほのめかしただけで完全な成功を収めることができなかった」と評価した。

 北朝鮮の核問題を解決していくこと、その過程で北朝鮮の脅威を防止することは韓国の生存にとって重要であることは正しい。しかし、文大統領は北朝鮮と軍事合意を結び実戦形式による米韓合同演習と軍事境界線付近の偵察飛行も中止した。これは韓国の国防力を一方的に弱める措置である。

 北朝鮮非核化交渉の過程では南北の緊張が高まることはありうる。それを防止するための備えをすることが大統領としての責務である。それを放棄して、北朝鮮との平和を求めることは非現実的な選択である。