気にしすぎと言えばそうかもしれないが、いざトラブルが起こったり子どもに何かあったりしたとき、特に母親がたたかれる風潮もある。サキさんはこれまでも「弱そうに見える女性」であったことから日常で危険を感じることが多かった。その上、子どもまで守れるのかという気持ちがあるのだという。

 夫と、夫の子どもを産んで幸せに暮らしたい。そんなシンプルな願望も、サキさんにとっては危険が大きく感じられる。

「こんな時代に子どもが欲しいと思うのは自分のエゴかもしれない、と考えてしまうことがあります」

 この社会がどのように見えるかは人によってさまざまだ。サキさんの子どもがどう感じるかは分からない。ただ、自分が守れないかもしれない、と感じるとためらいは大きくなる。

夫婦のあり方を見直すために
カウンセリングを受けたことも

 仲が良いというサキさん夫婦だが、最初からずっと仲が良いわけではなかったという。

「付き合い始めた頃に私がワガママで振り回してしまったことがありました。彼も優しいから疲弊してしまって。仕事のストレスとも重なり、彼が私と一緒にいるのが苦になってしまった時期があったんです。そのとき、パートナーだから甘えすぎるのは間違っていたなと反省しました」

 関わり方を変えるために、サキさんはカウンセリングを半年ほど受けた。

「それからは対話を大事にするようになりました。それまではかたくなに自分の主張を通そうとするタイプだったんですけど、ゆっくり落ち着いた感じで話すようになったり、相手が自分の意見を言いやすいような接し方に変えました。夫はもともと自分の気持ちを抑圧するタイプだったんですけど、自分のことをたくさん話してくれるようになりました。すごく仲良くなったのはここ1~2年のことです」

 もしそのまま、サキさんが自分の思うがまま振る舞い続けていたら今の2人の関係はなかったかもしれない。サキさんは、自分がワガママだったというが、相手が苦しんでいるのに気がつき、そして行動を変えようとしたのは、夫と一緒にいたい、自分と一緒にいて夫も楽しくいてほしい、という気持ちがあったからだろう。

これからの夫婦像のイメージは

 まだ、サキさんの気持ちは揺れ動いている。若い頃、30代の自分を思い描けなかったそうだが、今はどうなのだろうか。

「うーん。子どももいたらいたで幸せだろうし、ってすごく揺れるんですけど……。正直なところ、理想的なのは今の関係、お互いが好きなことがあって、お互いが尊重し合っていて、心を許し合えている、2人で最高のバランスが死ぬまで続けばいいのかな、って」

 子どもがいてもいなくても、2人の人生は続いていく。どの道を選ぶにせよ、夫婦にとって幸せで納得ができるものであってほしい。