また、フィリピンのドゥテルテ大統領の姿勢もこの頃から見えてきた。彼は、かつてトランプ元大統領とその性格の類似性を語られた、賛否の分かれる強いリーダーシップで有名だ。国内では高い支持率と人気も保持している。そんな彼であれば、「経済を止めるな!コロナは怖がるな!」という方向を貫くのかと考えていた現地の関係者は多かったようだが、実際は「コロナは絶対に広げられない」という断固とした姿勢を貫いた。

 そうした雰囲気が徐々に見えてきたこともあって、ミライズ英会話・取締役COOの渡辺和喜さんは「これは、日本より先にロックダウンの道を進むのではないかという予感があった」という。

一斉学校閉鎖…飛行機が止まるまで、たったの3日間

「忘れもしない、2020年3月13日」

 話を聞かせてくれた関係者全員が、この日のことを克明に覚えていた。

2020年3月のセブ島2020年3月のセブ島 写真提供:セブポット

「突然、一斉休校命令が出たんです」(Kredo代表 横田猛夫さん)

 途上国とも呼ばれることがあるフィリピンでは、有事に大きな強制力をもって対応することがある。突然、祝日が増えることも日常茶飯事で、こうした突然の発令には免疫のある経営メンバーも多い。しかしながら、今回は小中学校や語学学校などを含む全ての学校の「閉鎖命令」で、ことはより深刻だ。加えて、当初この通達には非常に曖昧な部分も多かったという。

 この命令は、金曜日に出たのだが、翌週月曜日から小中学校が閉まることになった。しかし、複数の関係者らは「いわゆる語学学校が閉鎖対象に含まれているのかという点が明記されておらず、問い合わせてもその回答はそろわなかった。結果として、学校それぞれに解釈をして動かざるを得なかった」と困惑していたようだ。

 ある学校では、通達が来てすぐに代表自ら説明会を開いた。政府からの命令でクラスを閉じざるを得ないことと、その先についても予想がつかないため、日本への帰国を推奨する説明をするほかなかったという。