学校閉鎖の通達が来た直後から語学学校業界関係者が集まり、韓国系も交え、情報を集約させて対応を話し合った。日本で言うと文部科学省のようなところに抗議もしたが、受け入れてはもらえなかったという。

 その結果、「学校閉鎖に関しては依然として曖昧な部分を残すが、日本行きの飛行機が全面的に止まる可能性はきわめて高い。この週末のうちになるべく多くの生徒を帰したほうがいい」という結論になった。

 そして予想通り、一斉休校命令から3日後の月曜日には、すべての日本行きフライトは飛ばなくなってしまった。

春休み中で大勢の留学生、3日間でどうやって帰国させるか

「授業ができない」「学校を閉じろ」と言われても、留学中の学生にとって、学び場だけではなく、滞在先を失うことになる。まだ到着したばかりで東南アジアに慣れておらず、土地にも詳しくない生徒もいるなか、ただ学校を閉じるというのは生徒たちの安全問題にも関わってくる。

 そうなると、優先の第一は、「生徒を安全に日本へ帰国させる、しかもたった3日で」ということになる。しかし、これが非常に難しいミッションだった。

 なぜなら、このころ、ちょうど大学生が春休みであり、学生のうちに、とセブ留学に来ていた生徒が膨大にいたのだ。彼らの中には、経営者と同じ危機感を共有できるものばかりではなく、情報も不十分な中、まだ授業を続けている学校に転校していく人もいたという。

 意を決してやってきた、英語を学ぶモチベーションが高い時に、「明日、帰国を」と言われてもすぐに気持ちを切り替えられる生徒ばかりではない。日本での危機感もまだ薄く、留学を続ける判断をする人がいるのも全く批判できない。