先進国との格差が拡大か?
「成長痛」を前にした新興国の現状整理
IMF(国際通貨基金)世界経済見通しでは、2021年の世界経済はワクチン接種率に優れる先進国の回復が先に立ち、新興国との格差が平時に増して拡大するとの見通しが示された。こうした見方は、新興国の混乱の種として警戒すべきものだ。
というのも、量的緩和の段階的縮小を示唆した2013年5月のバーナンキ元FRB議長の議会証言(通称バーナンキショック)以降、FRBが9回目の利上げを行う2018年12月まで、新興国は断続的に資本流出による混乱に陥り、停滞を強いられたことがあったからだ。
実体経済の状況に関し、新興国が先進国に劣後すると、先進国金利の上昇に連れて、新興国から先進国への資本移動が誘発されやすくなる。当然、新興国通貨は大幅な通貨安に直面する。この際、新興国の中銀は通貨防衛のために望まぬ利上げを強いられ、それが実体経済の勢いを削ぐことになる。
自由な資本移動が活発になっている以上、そのような動きは不可避であり、世界経済が危機から正常にシフトする際の「成長痛」のようなものなのかもしれない。新興国にとっては災難である。
しかし、新興国といっても多種多様だ。当然だが、その中でも選別は進む。考慮すべき論点は複数あるが、為替市場では伝統的に経常収支や外貨準備の状況からその耐久力を推し量るアプローチが奏功してきたように思う。
新興国内での選別が進む
最も重要なポイントは経常収支
定番は、やはり経常収支の状況による選別だ。図表1は経常収支と為替変化率(%、対ドル、年初来、4月30日時点、以下同)を整理したものである。経常収支は2020年実績および2021年予測がコロナショックの影響で大きく振れるので、2015~19年の平均を用いている。