公選法は政治家が選挙区内の有権者に金銭や有価物の提供を禁止しているが、通夜や葬儀・告別式に本人が出席して香典を渡すことは禁じていない。ただ、秘書や家族が政治家名義で「代理」として渡すのはNGだ。

 特捜部は秘書らが代理で渡した計約30万円について事実認定する一方、(1)他の大部分の葬儀などでは自分で持参していたが、代理は公務などでやむを得なかった、(2)違法性の認識を認めて反省しており経産相を辞任した、(3)違法行為に該当する金額が少ない――などから悪質性は低いとして不問にしていた。

河井克行元法相の暴走で
案里氏はとばっちり

 さて、それで菅原氏は立件され、罪に問われるのだろうか。過去のケースを踏まえ考察してみたい。

 選挙違反といえば、現在も公判が続いている元法相・河井克行前衆院議員(4月1日辞職許可)と、執行猶予付き有罪判決が確定した妻の案里氏(参院議員としての当選無効)を思い浮かべる方が多いだろう。

 克行氏は地元議員ら100人に計約2900万円を配ったとして起訴された。案里氏は克行氏と共謀し4人に計160万円を渡したとして懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決が確定した。

 この事件では、克行氏が(1)自ら現金を首長や議員ら地元の有力者に配布、(2)買収の人数が多く買収資金も多額、(3)パソコンのデータ消去など証拠隠滅、(4)買収の意図や事実関係の否定――など、捜査段階での心証が悪すぎた。これで立件見送りとなるはずがない。

 一方の案里氏だが、筆者は公判を通じて、ある意味でとばっちりだったという印象を受けた。克行氏の意向で立候補し、その直前にあった統一地方選で「陣中見舞い」「当選祝い」をポケットマネーで出したという認識だったように見えたのだ。