新型コロナウイルスワクチンの接種が急速に進む富裕諸国と、接種が大幅に遅れている貧困諸国との間で格差が拡大している。これに拍車をかけているのがインドの感染急増だ。インドの感染者数の劇的増加は、開発途上諸国でのワクチン接種の取り組みをさらに困難にしている。14億の人口を抱えるインドでワクチン接種を完了した人の割合は、2%以下にとどまっている。インド政府は先月、ワクチンの輸出を制限した。このため、インド製薬業界の大きな製造能力に期待していた貧困諸国への供給が遅れている。多くの開発途上国では、医療従事者を含めて国民へのワクチン接種率が極めて低水準にとどまっている。インドの輸出制限はとりわけ、世界保健機関(WHO)主導による国際的な枠組み「COVAX(コバックス)」の主要な弱点を浮き彫りにしている。コバックスは、主に西側諸国政府の資金拠出によって、中・低所得の92カ国に無償でワクチンを供給する取り組みだ。