政権の本気度は
首相や閣僚の発言ににじみ出る

 3回目の緊急事態宣言の発令を決めた23日の記者会見で、菅首相は、「欧米に比べ感染者ははるかに少ないのに医療体制が逼迫(ひっぱく)している。首相がコロナ患者の病床数を増やすといっても増えないのはなぜか」と聞かれた。

 だが「現状は(病床数を増やすのは民間病院に)お願い、要請しかできない」としか答えられず、聞かれてもいないワクチンの話をしゃべり出した。

 田村憲久厚生労働相はNHKの番組で、「自粛でなくロックダウンなどもっと強い措置は取れないのか」と聞かれ、「国民に強制できる法律がない」と答えた。

 首相も担当相も「法的権限がない」ことをできない理由に挙げる。気は確かか、と首をかしげたくなる。

 内閣や国会は法律を作るのが仕事だ。必要な政策を進める権限がないのなら法制化して実現するのが首相や閣僚の責任だ。

「権限がない」は言い訳でしかない。

 やる気がないのか、国民を説得する自信がないのか。いずれにせよ統治者として自覚と能力に欠けることを白状したようなものだ。

東京五輪開催の思惑で
宣言の解除や期間を決めた?

 その一方で菅首相が身を乗り出したのは、政局や東京五輪が絡む政治案件だった。

 緊急事態宣言の期間や対象業種など、本来なら役人や専門家に任せる課題に首を突っ込んだ。

 今回の緊急事態宣言発令でも、専門家が3週間必要と主張した宣言の期間を5月11日までの17日間にしたのは、5月中旬に予定されるIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長の来日を意識したため、とみられている。

 前回の緊急事態宣言を感染が収まりきらないうちに解除したのは、聖火リレーのスタートが迫っていたからだといわれる。

 検査はしない、強い措置も取らない、病床は確保できない。そんな中で、首相は「東京五輪はやる」と言う。

 23日の会見でも「五輪開催はIOCの権限。IOCは既にやると決めている」と、IOCの方針を前面に立てて開催を主張した。

 東京五輪組織員会は、入国者に義務づけられている「2週間の隔離」を免除し、その日から練習できるようにすると言う。

 小池百合子都知事は、緊急事態宣言で「東京に来ないで」と訴えているが、1万人規模でやってくる五輪選手の水際対策は当然、甘くなる。2週間も隔離されたらベストコンディションで臨めない、と考える選手は少なくないだろう。

 通常の検疫体制では参加者は減る、だから甘くして参加しやすくするということのようだ。

 東京五輪は、感染対策より上位にあるということなのか。