「もともと実力はあったものの、アメリカや中国などの陰に隠れて見過ごされがちでした。2013年~14年あたりから欧州発のユニコーンが急増したことなどにより、投資家がその価値に気付き始めたのだと思います」
欧州スタートアップ
ビッグ3は英・独・仏
ユニコーン企業とは一般的に創業10年以内で企業評価額10億ドル以上の未上場ベンチャー企業のことを指す。スタートアップ企業などの動向を調査・分析するCB Insightsの資料によると、ヨーロッパのユニコーン企業は21年1月時点で約60社あるという。西欧・北欧の主要国を中心に広く分布しているが、中でも欧州スタートアップのビッグ3といえるのはイギリス、ドイツ、フランスだ。
「特にイギリスは、頭一つ抜けている印象があります」(雪田さん)
イギリスはもともと基幹となる産業があったところにテクノロジーが結びつき、新たな価値を生み出している。ロンドンを中心に、以前から優秀な人材・情報・企業・投資家を集めており、スタートアップを取り巻く環境も活力がある。ただしBrexitが今後どういう影響を与えるのかは、注視する必要があるという。
一方で、ドイツはベルリン、ミュンヘン、デュッセルドルフなど一都市に集中しない分散型エコシステムを形成しているのが大きな特徴。また従来、ドイツの製造業は世界的にも競争力があり、これがスタートアップの発展にも寄与している。
フランスは、政府が「フレンチ・テック」政策として国を挙げてスタートアップを推進してきた。さらに大企業が業種の枠を超えたスタートアップの支援を行っているという。伝統的に数学・アルゴリズムなど基礎研究に強いとされる。
「AIが強いと言っている国は他にもありますが、やはりAIといえばフランスというイメージがありますね」と雪田さん。
筆者が住んでいるポーランドの状況についても簡単に触れたい。ポーランドはIT人材が豊富なことで知られているが、EU諸国の中では平均賃金が安く、コスト面でメリットがあるとされている。