また、シリコンバレーなどでは日本のベンチャーキャピタル(VC)、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)が懐に深く入り込むのは困難という声も聞くが、「ベルリンではまだ“インサイダー”として入り込める余地もあると思います」と山本さん。
ドイツのスタートアップの特徴としては、もともと地方分権が進んでいる国なので州政府の力が強い。スタートアップを取り巻くエコシステム(スタートアップ・エコシステム)に関しても州によって体制が異なるという。
「ベルリンは、つながりの中でイノベーションを起こすことを大切にしており、エコシステムはきれいに形成されていると思います。スタートアップは自分たちだけでは問題が解決できないことも多く、いろんなところからサポートを受けて大きくなっていくもの。ベルリンではその仕組みができあがっていると感じます」(山本さん)
スタートアップ・エコシステムというと難しそうに聞こえるが、要は困ったときに相談に乗ってくれたり、助けてくれたりする人や組織が身近にどれだけあるかということだ。
また21年は日独交流160周年にあたり、欧州スタートアップとの共創に向けたアクセラレータープログラムも実施されるという。このプログラムは「ベルリン州経済エネルギー公共企業局」が主催するイベント「アジアベルリンサミット」の公式サテライトイベントとなっている。
ユニコーン多数輩出の北欧
日本と「相性がいい」ワケ
北欧も、日本からの投資が急増しているエリアだ。ソフトバンクは13年に、フィンランドのゲーム系スタートアップ「Supercell」に約13億ユーロを出資した(追加で株式取得後、16年に売却)。それ以降、日本の投資家によって資金提供または買収された北欧のスタートアップは60社以上もあり、これらの投資の約75%以上が17年以降に行われているという。
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「日本からの投資が急激に増えているのは、ユニコーンの存在が大きいと思います。北欧は今までに27社のユニコーン企業を輩出。エリアの人口2600万人として換算すると、1人当たりのユニコーン企業輩出数はシリコンバレーに次ぐ規模となります※」
※2021年3月時点
と語るのは、イノベーション・ラボ・アジアで主任コンサルタントを務めるユリアン・原・ニルセンさん。イノベーション・ラボ・アジアは北欧と日本のスタートアップ・エコシステムをつなぐ活動をしており、「新北欧」と呼ばれるデンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、アイスランド、エストニアという国々をカバーしている。デンマーク産業財団の支援による非営利団体として、北欧と日本の投資家、スタートアップ企業、エコシステム内の全てのステークホルダーの連携強化に努めている。
ではなぜ、北欧から数多くのユニコーンが登場しているのだろうか。