「個人の感情に向き合う2カ月でした。これまで生徒のことだけを考えてレッスンを試行錯誤して提供し、スキル上達といううれしい声をもらうということの連続だったので、SNSなどを通じて対応したくてもできないクレームが届くというのがスタッフにとって初めてだった。スタッフのメンタル面が心配になった時期もあった」(語学学校関係者)

復活できた学校や、返金対応で体力が途切れた学校も

 セブ島の一等地であるITパークと呼ばれる場所に大きなスペースを有し、フィリピン人講師とともに英語の基礎力を付けたのちに、そのまま英語でプログラミングを学べるユニークな学校「Kredo」では、最終的に未消化分の授業料を90%返金するという決断をした。これからの経営の継続、スクールの維持を考えるとかなりの英断だ。そして現在、同校のレッスンは、急速に完全オンラインに移行しており、いったん売り上げゼロの状態から、ほとんどのスタッフの雇用を維持し、継続して経営ができるまで回復してきている。オンラインでも価値あるプログラムを提供しようと知恵を絞り、顧客の数も徐々に増えてきていると聞く。

 このように、しばらくの間はどの学校も、人命優先、返金対応に動いていたが、先生の雇用を守り、自分たちの授業を継続していく方向に、少しずつかじを切るようになっていた。一方で、あまりにも先が見えない中で、許認可だけ残し、いったん校舎をクローズをするという決断をせざるを得なかった学校もある。

 在校生の帰国にはフライト費用の立て替えまでして全力を尽くしていたと聞く学校もあれば、現場の先生たちから対応を悪く言われている学校もある。また、営業手法が強引で、学生を対象に勧誘を行いキャンセル料で稼いでいるようなタイプのエージェントは、案の定、生徒を現地に放置したケースもあったという。有事ともいえる状況に、生徒の帰国をめぐり、経営者の本性が見えたような機会が多くあったようだ。