残された邦人、約3000人の帰国は?

 フライトが飛ばなくなった後、まだ3000人を超える帰国をするはずだった日本人が残されていた。こうした状況を見て、日本人会、現地でフリーペーパーを発行するなど、常に情報を届けている邦人メディアである「セブポット」の代表とその周辺の数名がおのおのの責任感のみで、1カ月以上、身を粉にして動いた。

 チャーター便を飛ばすためには、先に入金をしてもらい搭乗名簿を作成するなど、確実に乗客がいて支払いがなされることを証明しなくてはならなかった。数名の有志が無給で連日空港に張り込み、こうした事務手続きをした。混乱する人たちを前に、まるで戦時中のようだと感じた瞬間まであったという。

 「チャーターということで、基本的にチケットの価格は正規料金になります。具体的には片道11万円だったのですが、格安航空券でやってきて、生活費も安いからとセブ島で英語を学ぶことを選んでいる学生さんは、この11万円が支払えないんです。カードの限度額が10万円という人が学生さんには結構いらして、その場で知らない人同士が紙に住所を書いて交換し、カードを切っている様子や、小銭を数えて貸し借りしている様子を目にしました」(邦人メディアセブポット 佐藤ひろこさん)

 この時期に帰国をされた方々は、それぞれに悲痛な思いを抱えていたと思う。怖い思いをした人もいるかもしれない。航空会社、各語学学校に精通し、そこに心を注げる彼女らのような存在がなければ、今頃残された3000人は、どうなっていただろうか。想像するだけで体がすくむ。

 最後に、セブ島の治安面について。これについては不思議と悪化している感じはないと現地の邦人たちが声をそろえて言う。もしかしたら、フィリピン人の国民性が影響しているのかもしれないが、自粛警察のような人も見られず、現地では、比較的ゆったりと暮らせているらしい。

 完全に元には戻らないにしても、セブ島に限らず留学先で得られる視座は特別なものがあるように思う。また、世界中で語学習得ができるようになる日を心から願いたい。

 次回は、オンライン化に舵をきった語学学校で自宅から学ぶコロナ禍ならでは具体的な方法を紹介する。