NHK総合テレビ『チコちゃんに叱られる!』ではないが、近頃は少々ボーッとしていると、世の中のトレンドや常識がガラリと変わっていることがある。作家デビューの方法も以前とは違う。現在、テレビ東京系で放送されている『私の夫は冷凍庫に眠っている』も、そんな時代の潮流から生まれた作品である。(税理士・岡野雄志税理士事務所所長 岡野雄志)
投稿サイトは新人発掘の突破口になるか
2021年5月2日から東京ビッグサイトで開催予定の「コミックマーケット99」(通称・コミケ)が、新型コロナウイルス感染防止のため延期された。世界最大の同人誌即売会で、「オタクの祭典」としても知られる。同人誌の漫画家にとってはスカウトのチャンスもつかめ、商業デビューへの登竜門でもある。
一昔前までは、漫画家や小説家といった作家デビューを狙うなら、上記のような「同人誌に参加する」や「出版社へ持ち込む」「新人賞などに応募する」という方法が主流だったように思う。近頃では、それに「SNSでバズる」「投稿サイトへ掲載する」が加わったそうだ。
「本が売れなくなった」といわれて久しい。しかし、日本出版販売株式会社(日販)『2021年2月期 店頭売上前年比調査』(対象店舗:日販取引書店におけるPOS調査店)によると、全体で104.4%。10カ月連続の前年超えで、コロナ禍の巣ごもり効果が影響したようだ。
同社の『2021年3月期 店頭売上前年比調査』では、全体で96.6%に落ち込んだが、コミックは18カ月連続での前年超えで、市場を牽引している。『鬼滅の刃』に続き、『呪術廻戦』関連商品のヒットが好調要因とのことだ。
一方で、新型コロナウイルス感染症拡大は、新人の発掘も困難にしている。そのため、大手出版社も投稿サイトの運営に熱心だ。
◆講談社:漫画投稿サイト「DAYS NEO」「マガジンデビュー」、小説投稿サイト「NOVEL DAYS」など
◆集英社:漫画投稿サイト「ジャンプルーキー!」「あしたのヤングジャンプ」「マンガMeets」、小説投稿サイト「Webマガジンコバルト」など
◆小学館:漫画投稿サイト「ミタイ!」、文芸ポータルサイト「小説丸」など
各社とも、オンラインでの作品持ち込みや、新人賞などのオンライン応募も推奨している。出版社同士のコラボによる、オンライン公募の賞やコンテスト創設なども盛んである。
また、大手出版社以外の運営による投稿サイトも林立している。「ニコニコ静画」「LINEマンガインディーズ」「マンガボックスインディーズ」「pixiv」「小説家になろう」「エブリスタ」…etc。
前述の『私の夫は冷凍庫に眠っている』も、「エブリスタ」で人気を博した作品である。DeNAとNTTドコモの共同出資企業・株式会社エブリスタが運営する投稿コミュニティーサイトだ。八月美咲による小説として掲載された後、高良百によってコミカライズされた。
殺人を犯した配偶者に相続権はあるか
『私の夫は冷凍庫に眠っている』は、サスペンスである。夫の暴力に耐えかねた主人公が彼を殺害。死体を冷凍庫に隠すが、翌朝、殺したはずの夫が何食わぬ顔で現れて……。4月10日(土)からテレビ東京系のサタドラ枠で、本仮屋ユイカ主演によるドラマもスタートした。
さて、ここでまた、相続税専門の税理士という仕事柄、つい相続のことを考えてしまう。夫や妻、つまり戸籍上の配偶者は、通常、常に相続人となる(ドラマでは婚約者といっていたので、残念ながら相続権はない)。しかし、相手を殺してしまった場合は、どうだろうか。