山脇氏によると、思春期の子どものうつ症状には大きく、三つの特徴が見いだせるという。

「コロナ禍以降、私が勤めているカウンセリングルームにも、うつの疑いのある子どもが来院する機会が増えています。とりわけ中学生や高校生が多いですね。思春期の子どものうつ症状には、“好きなことしかやらない”、“いくら寝ても寝足りない”、“食欲が起きない”という三つが顕著な特徴として挙げられます。ここで言う“好きなこと”とは、YouTube視聴やテレビゲームが代表的です。もちろん他にも憂慮すべき兆候はありますが、この三つがそろったら中等度以上のうつを疑うべきです」

 ゲームやYouTubeにかまけ、寝てばかりいる子どもを見ると、親はつい“怠けている”とみなして、強く叱ってしまいがちだ。また、食欲が落ちているのに気付いても「ちゃんと食べなさい」と、とがめるような口調になってしまうことも多いだろう。先述の三つの傾向を見せる子どもには「うつが疑われるため、叱責するとメンタルをさらに追い詰めることになる」と山脇氏は注意を促す。

「ほとんどの親は、思春期の児童がうつ病を患うという発想自体がありませんから、子どもの生活リズムが崩れているのを見ると、『ちゃんとさせよう』という意識が働くのは当然です。一方で子どもの側もまさか自分が心の病気にかかっているとは思いも寄らないため、叱られるとすぐに『自分はダメな子どもだ』と思い込んでしまいます。大人の場合、うつを自覚して病院に駆け込み、自らを助けることができますが、子どもの場合は周囲も自身も異変に気付かないまま、症状を悪化させてしまうケースが多いんです」

複数の大人のチェックが
早期発見につながる

 子どものうつは大人の場合に比べ、病状の悪化に気付きにくいという特徴を持つ。周囲の大人は何を手掛かりに子どものメンタル失調に気付いてあげればいいのだろうか。

「子どもが好きなことしかしようとせず、過眠傾向や食欲不振を示すと、親は心配のあまり本人に理由を問い詰めてしまいがちです。子どもが心の内を素直に打ち明けてくれればいいのですが、話してくれない場合、『何で話してくれないの?』といら立ち、叱責することにつながりかねません。子どもの異変に気付いた親は、本人には直接理由を問わず、まずは担任の先生に学校での様子を聞いてみるといいでしょう。もしそこで『そういえば最近元気がない』といったネガティブな情報が得られた場合は、心の病気を患っている可能性が高いです」