21世紀のニューディールを
目指す活動家に変身

 選挙キャンペーン中はすべてをトランプ政権以前の“ノーマル状態”に戻すだけの魅力の薄い中道派の模範だと思われたバイデンだったが、就任後は内に秘めた野心を急速に燃え上がらせてリベラルの実務派を集めたバイデンチームを結成。一世一代の21世紀型ニューディールを目指す活動家に変身した。

 外交でも、中国やロシアの冒険主義にビシッと釘を刺し、「アメリカ史上最長の戦争を終わらせる時だ」として、米同時多発テロから20年を迎える9月11日までにアフガニスタンの駐留米軍(2500人)を完全撤退させると表明している。アフガン侵攻のきっかけとなった同時多発テロの犠牲者に敬意を払うことも忘れていなかった。なかなかの気配りである。

「バイデンではなく、まるで大統領予備選で戦った民主党左派のエリザベス・ウォーレン議員を見ているようだ」とリベラル派のニュース雑誌ザ・ニューヨーカーは驚きと喜びを隠さなかった。

 こんな大盤振る舞いして大丈夫かという共和党議員からの批判の声に対しては、イエレン財務長官の発言が、あっぱれなほど歯切れがよかった。

「足りないぐらいなら出し過ぎて後悔するほうがマシ。そうでないと本当に困っている人たちに届かないから」

 イエレンも、新しく大統領経済諮問委員会(CEA)委員長に就任したセシリア・ラウズ(プリンストン大学教授)も専門は労働経済学、つまり労働者の味方なのだ。ワクチン敗戦国日本の宰相には彼女たちの爪のあかでも飲ませたい。

 予想通り金もうけ主義で増税を嫌う実業界からは反発の声が上がった。だが、国民の反応はおおむねバイデン大改革に好意的だ。支持率はジョージ・W・ブッシュ、オバマには及ばなかったものの、トランプをはるかに上回る50%超(53%)。バイデン政権はロケットスタートに成功したようにみえる。