「コロナ経済死」する人たちを軽視してきたせいだ

 いろいろな要素があるだろうが、個人的には、この1年以上続けてきた日本の「人命軽視」のツケが大きいと思っている。

 と言っても、それは「自粛に従わないで飲みに行く」とか「SNSで日本の新規感染者数はそれほど多くないとツイートする」というような類の「人命軽視」ではない。コロナ自粛によって収入が激減し、身も心もボロボロになって夢や生きる目標を失ってしまう、言うなれば「コロナ経済死」ともいうべき苦境に陥る人たちがこの1年で膨大な数に膨れ上がっている。

 にもかかわらず、そこから頑なに目を背け続けてきたという「人命軽視」である。

 と言うと、「大変な人が多いのは事実だが経済死は大袈裟だろ、政府の対策もあって失業率はそこまで上がっていないじゃないか」という反論があるだろうが、今、日本でどれだけ多くの人が「コロナ経済死」しているかという実態を把握するには、失業率よりも「実質的失業者」に注目すべきだ。

政府が目を逸らす「実質的失業者」が急増中
自殺者増も…

「実質的失業者」とは野村総合研究所が、パート・アルバイトのうち、「シフトが5割以上減少」かつ「休業手当を受け取っていない」人たちのことを定義したもので、彼らは統計上の「失業者」「休業者」には含まれない。
 
 野村総研が2月に、全国20~59歳のパート・アルバイト就業者6万4943人を対象に調査した結果と、総務省の労働力調査を用いて推計したところ、21年2月時点で、全国の「実質的失業者」は、女性で103.1万人、男性で43.4万人にのぼったという。

 要するに、雇い主から「緊急事態宣言出ちゃったから今月はシフト半分で」なんてことを言われ、給料が激減している非正規雇用の方たちが、繰り返される緊急事態宣言の中で、急増しているということだ。
   
 一方、政府は3月の完全失業者(180万人)は前月より23万人減っており、雇用情勢は緩やかに回復をしていると胸を張る。

 しかし、実はその統計に組み込まれない形で、「かろうじて失業はしていないが、まともな生活ができないような低賃金で飼い殺しにされている労働者」が150万人近く存在しているかもしれないのだ。