もちろん、収入減で苦しんでいる「実質的失業者」はパートやアルバイトに限った話ではない。正社員の方でも出勤制限で残業代などをカットされて収入が大幅に減ったという方もいるだろう。個人事業主の方も、どうにか補助金で食いつないでいるという方もいるだろう。つまり、表面的には「失業者」ではないものの、実態としては失業しているのと同じくらい深刻な経済的困窮に追い込まれている日本人の数は150万人どころではなく、凄まじい数に膨れ上がっている恐れがあるのだ。
このように統計で浮かび上がらない「コロナ経済死」の深刻さがうかがえるようなデータもある。厚生労働省によれば、2020年の全国の自殺者数は2万1081人で19年比で4.5%増で、912人増えている。この10年、日本の自殺者数は減少傾向にあったが、11年ぶりに前年比を飛び越えたのだ。
自殺の理由は個人でさまざまだが、リーマンショックの時に自殺者が増えたという事実もあり、社会不安や失業率が影響するのではないかという専門家の指摘も少なくない。ならば、終わりの見えない経済活動自粛による「コロナ経済死」の増加が影響を及ぼしている可能性もゼロではないのではないか。
経済活動再開の後押しを!
「人命軽視だ」と言う人もいるかもしれないが…
このような状況を踏まえると、早急に「コロナ経済死」の対策を真剣に議論すべきなのは明白だ。
「実質的失業者」からもわかるように、政府や自治体が今やっているような、事業者へのカネのバラまきは残念ながら、経営者の懐に入るか、運転資金に化けるだけで、末端の労働者にまで還元されない。彼らにダイレクトに届くような公的支援はもちろん、賃金を引き上げた事業者には減税などのインセンティブをつけるなどの実効性のある賃上げ施策が必要だろう。
だが、それよりも何よりも大切なのは、猫も杓子も「人流抑制」「自粛」ではなく、しっかりとした感染対策をしている分野に関しては、どんどん経済活動再開の後押しをしていくということだ。
このような意見を言うと、「人命軽視だ」と文句を言う人も多いが、「人命」を重視しているからこそ申し上げている。
新型コロナで亡くなった方は18日時点で、1万1847人にのぼり、その9割は70歳以上となっている。一人ひとりの方がかけがえのない大事な存在であり、それぞれに家族や大切な方たちがいることを想像すれば、これが甚大な被害であることは言うまでもない。亡くなられた方のご遺族からすれば、「緊急事態宣言など生ぬるい、なぜもっと強硬な姿勢で、感染を防いでくれなかったのだ」と政治や行政に怒りや不満を抱える方もいらっしゃるだろう。
その心中は察してあまりあるし、このような形で命を落とされる方を1人でも減らしていくには、「人命最優先」で人流なんぞすべて止めてロックダウンでもなんでもしてくれた方がいいのでは、という主張も心情的にはよく理解できる。