中国で「盲盒」を最初に開発したのは北京の新興企業、ポップマート(POP MART)だ。同社は2010年に創業。現地メディアの報道などによると、創業者の王寧氏は日本のカプセル玩具にヒントを得て、2016年頃から香港の人気アーティストがデザインした「Molly(モリー)」のフィギュアを販売し始めた。

 発売から間もなく大ヒットするようになり、他のキャラクターのシリーズも発売。中国の「盲盒」業界でトップに躍り出た。2020年、同社の売上高は約25億元(約430億円)で前年比49.3%増と急激な伸びを示している。ほかに、化粧品メーカーや食品メーカーなども、商品を「中身が見えない盲盒スタイル」で売り出しており、「盲盒」市場は2024年には300億元(約5000億円)の規模にまで拡大すると予測されている。

 それにしても、なぜ中国の若者たちは、ここまでカプセル玩具にハマるのか?

 取材してみると、理由は大きく二つあるようだ。

中国の若者がカプセル玩具に
ハマる二つの理由とは?

 一つ目は、やはり、それまでの中国になかった、その購入方法だ。中身が分からないということはハズレもあることを意味し、無駄になってしまう可能性もあるが、この買い方には「目的買い」では決して得られない「体験」がある。2015年に大ブームを巻き起こした中国人の「爆買い」を記憶している人は多いと思うが、「爆買いの後」に彼らの消費傾向として注目されたのが、「モノ消費」ではなく「コト消費」だった。

 単に欲しい商品を購入することも、もちろん楽しみではあるのだが、豊かになった中国ではモノをただ手に入れるという行為よりも、プラスアルファの楽しみとして「体験」を求めるようになった。

 新型コロナウイルスの感染が拡大する直前の訪日旅行でも「体験型旅行」がはやり始めていたし、現在ほぼコロナが収束している中国国内でも、お花見や釣り、キャンプ、果物狩り、料理教室などの「体験型」の旅行が大人気となっている。