バブル期の「ドーナツ化現象」との違いは?

 1980年代のバブル景気の時は、土地価格の高騰からマイホームの購入は郊外しかなかった。今よりもファミリー世帯が多く、結婚と出産が多い家族には持ち家需要が旺盛だったので、都心から離れて住むことは「ドーナツ化現象」と呼ばれた。

 年収に対して高すぎるマイホーム価格に取得を諦める人も多く、地方出身の人は「Uターン」、そうでない人は「Iターン」と呼ばれたように地方居住が進み、都区部の人口が減少した年もある。これは、価格水準が年収に対して十分に下がるまで、バブル崩壊後も続いた。しかし、こうしたバブルの崩壊と今回は理由が違う。

 今回の人口減少では、持ち家需要は旺盛で分譲マンションも戸建ても売れ行きは非常にいい。

 一方で、賃貸は独身世帯の流入減少で稼働率が悪化している。前回のバブルがファミリーの持ち家取得層が地方移転や郊外化したのに対して、今回は単身の賃貸層が地方や郊外に移転しているのである。

 ちなみに、都区部は流出超過に転じたが、首都圏の都区部の周辺に位置する都下(23区外)、神奈川県、埼玉県、千葉県は安定した人口流入が続いている。今回に限っては都区部の一人負けの様相だ。

 もっとも、東日本大震災直後、千葉県では人の流出が続いた。要因は、湾岸地域の液状化と放射能汚染を懸念した引っ越しだった。東日本から大阪、福岡などの西日本への流出は約2年間続いた。