高齢者に生命保険は必要か

 それでも保険に加入するべきだとすれば、それは「必要だから」であろう。保険が必要だ、というのは、「保険に加入しないと、とても困ったことになる可能性がある」ということだ。

 そうでないなら、保険に加入する必要はない。つまり、保険会社のコストと利益を分担する必要はなく、保険に加入すべきではないのである。

 定年退職後の高齢者が生命保険に加入している例は多いようだが、彼らが亡くなったら誰か困るのだろうか。悲しむ人は多いかもしれないが、金銭面で路頭に迷う人はいないはずだ。

 残された配偶者は、退職金が相続できるだろうし、遺族年金ももらえるかもしれない。そもそも稼がないで使うだけの高齢者が永眠すれば、消費支出が減って家計にはプラスかもしれない。

 諸事情によって生命保険が必要だという場合も皆無ではないだろうが、多くの場合には、保険料を支払う代わりに同額を預金しておいた方が、残された配偶者の老後は安心だと思う。

 一方、新入社員に向かって「社会人になったのだから、生命保険くらい加入しないと一人前に見られない」などといった勧誘が筆者の若い頃には行われていたので、今でも行われているかもしれない。

 そもそも生命保険に加入していれば一人前なのかという基本的な疑問があるが、それはさて置き、新入社員のほとんどは独身であろうから、養うべき家族もいないケースがほとんどだろう。

 そんな新入社員が死んだとしても、悲しむ人はいるだろうが、金銭面で路頭に迷う人はいないだろう。新入社員が親の生活を支えている、といった場合は別であるが、そうでない場合には生命保険は不要であろう。