火災保険さえも不要な場合がある

 火災保険は、通常は必要であろう。住む所が火事でなくなったら非常に困るからだ。したがって、「火事にならなかったら保険料を損するのだから、火災保険には加入しない」という人は少ないはずである。

 しかし、それでも火災保険が不要な場合も皆無ではない。相続した親の家を売る場合、売れるまでの間は火災保険は不要である。空き家が火事になる可能性は高くないであろうし、火事になっても困らない。どうせ更地にして売るのだろうから。

 あるいは、親の家は自分が生まれ育った家でもあり懐かしいので、しばらく売らずに置いておきたい、という場合もあるかもしれない。その場合には、親の家の火災保険も不要だし、場合によっては自宅の火災保険も不要かもしれない。自宅が焼けたら親の家に住めばよいからだ。

 さらに、もし1億円の現金を持っているならば、火災保険は不要だろう。もし家が焼けたら、預金の一部を使って新しい家を建てればいい。

 では、相続と保険との関係を考えるとどうだろうか。生命保険は、相続税を計算する際に相続人1人あたり500万円まで非課税なので、相続税対策として生命保険に加入するという人もいるかもしれない。しかし、その際にはまず、自分の相続税額を計算してみることをお勧めしたい。

 よほどの金持ちは別として、「上級庶民」のレベルでは、相続税率はそれほど高くないので、相続税対策として生命保険に加入する方がむしろ高くつく場合が考えられるからだ。

 中には、安心を買うための保険がかえってリスクを増してしまう場合もあり得る。例えば、外貨建て保険に加入すると、為替リスクが生じかねない。一度に多額の外貨建て保険に加入する人もいるが、外貨購入も株式と同様に「時間分散」すべきだ。

 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織等々とは関係がない。