起業は意志が10割守屋氏の近著『起業は意志が10割』(講談社)

 続いて、国語の領域での進化をお伝えしよう。

 これまでの日本企業では、「ローカルコミュニケーション」が前提だった。社員が1カ所に集まり、話し合う。決まりきった礼儀を重んじ、行間を読むことが当たり前だった。それができないと、「あいつは変わり者だよね」といわれ、いわゆる村八分にされた。

 ウィズコロナの時代となり、5年分の時間のジャンプが起きた今、「リモートコミュニケーション」が主流となった。リモートコミュニケーションにおいては、「行間を読んで振る舞え」は通用しなくなった。さらに人材育成においても、「オレの背中を見ろ」で成長させることは難しい。自ら主張し、言語化していかなければ相手に通じない。オンラインでのつながりになると、主張しなければどんどん埋没していく。対面であれば、「いることに意味がある」というシーンもあったが、オンラインの場合はそうはいかない。

 当然、この進化への対応力は、差が激しい。単純で表面的なデジタルを使えるかどうかという問題ではなく、もっと深い部分の差分である。言葉で表すと、リモートコミュニケーション下における「リモートトラスト」が築けるかどうかだ。直接会うことのない相手に信じてもらえるか、あるいは信じることができるか。リモートトラストを築いてコミュニケーションできるか否かは事業を左右する大きな問題となる。

 最後に、算数の領域について。

 これまでは規模が正義で、所有者が強かった。しかし、ウィズコロナの時代では、「大きい者が強く、小さい者が弱い」という従来の構図のほころびが大きくなった。社会の先行きが不透明となった今は、変化に対応する機敏さがある者が勝ち抜ける。モノを持っていなくても、あらゆる領域にまで広がったシェアリングを活用すれば、仮想現実的にすべてを所有することができる。「持つ者」が強いのではなく、「動く者」が勝ち抜ける世の中なのである。モノを持っていなくても、変化に柔軟に対応していくことで業績を向上させたり、利益を上げたりすることができる。

 もちろん、これもまた、ウィズコロナによって突如として起きた変化ではなく、これまでも確実にその方向に進んでいた。それがこのコロナによって一気に加速したということである。これからは、今までの勝ちパターンにとらわれていると、突然死を迎えるリスクが高まる。強者だと思っていたのに、ある時、突然転落する。それほどまでに先の見えない時代になったからこそ、動く力が今まさに求められているのである。