株価Photo:PIXTA

市場ではしばしば税改正の影響を懸念する声が浮上するが、実はこうした懸念は、市場の仕組みを無視している――。そのように主張する米国有数の著名投資家、ケン・フィッシャー氏の特別寄稿をお届けする。

増税は株式市場に大打撃ではない
米国と日本の歴史から理由をひもとく

 増税は株式にとって大問題だろうか。政治家がいかなる形であれ増税すると脅せば、評論家は相場の暴落は近いと警告する。法人増税で利益が減り、株式が暴落すると頑固に主張するのだ。また、個人の所得増税やキャピタルゲイン課税の増税は、投資家の投資余力や株式投資への意欲をそぐと言う。

ケン・フィッシャ―氏Ken Fisher/運用資産十数兆円規模の独立系運用会社、フィッシャー・インベストメンツの創業者。米国の長者番付「フォーブス400」常連の億万長者。ビジネスや金融分野の出版物に多数寄稿し、投資関連の著書も数多い。父はウォーレン・バフェット氏が師と公言し、「成長株投資」の礎を築いた伝説的投資家である故フィリップ・フィッシャー氏

 バイデン米大統領による米国の広範な増税計画を巡る現在の懸念は、増税ヒステリーを示す最新の一例にすぎない。だが、こうした懸念の全ては市場の仕組みを無視している。増税の“株式殺傷力”が神話だと知るには、日本や米国の歴史を振り返ってみればよい。

 評論家は、バイデン氏が219兆円のインフラ計画を多種多様な法人・個人増税に加えて、法人税の国際最低税率やデジタル税でまかなおうとしていることを、株式上昇が「無視」していると言う。

 大半の投資家が、増税は株式に悪影響と信じている。そして、その多くがバイデン氏の要求が加速する可能性をも懸念している。富裕税や新たな金融取引税、さらにもっと!と課税の対象が広がることへの恐れだ。2021年年初まで遡及する形での適用を不安視する声もある。

 株式は大きなストーリーを決して無視しない。それでは、なぜ昨今の税改正を巡る議論は市場にさしたる影響を与えていないのだろうか。