
トランプの製造業復活への決意
高関税で達成できるのか
関税戦争に歯止めが掛からず世界景気後退に陥る最悪シナリオの蓋然性は低下したとの安心感が広がっている。トランプ大統領も債券市場の動揺には勝てないとの見方が定着し、米中間での関税戦争の休戦合意以降はリスクオフモードが続く。
しかしながら、米国の関税政策は「解放の日」前に戻ることはない。世界を驚かせた10%のユニバーサル関税は残りそうだし、鉄鋼や自動車といったトランプ大統領が重視する戦略産業の関税は、むしろ引き上げられる方向で展開している。
関税政策を巡る不確実性は引続き強いが、混乱の中で一段と明らかとなってきたことは、トランプ大統領の関税政策による製造業の復活やリショアリングに対する取組みは本気であるということだ。
しかしながら、これまで進んできた米国の製造業のオフショアリングは、米国の比較優位性を活かして製造業が生き残ろうとする経済合理性を持つ動きであった。これを高関税という政策ツールで強引に反転させることは容易なことではない。