電話は不愉快・不適切【理由5】
会話で頭が「リセット」される

 筆者が電話を嫌う最大の理由は、電話をすると頭の中がいったん電話の話題で一杯になって、電話の前に考えていたことがリセットされてしまうことだ。

 どういうことか。

 例えば、筆者がこの原稿を、ここまで書いた時点で電話に出て話をしたとしよう。会話では、相手の話をその場で理解し、反応しなければならないので、頭の中は電話の話題でいっぱいになるだろう。

 すると、「リセットをどう説明しようか」とか、「【理由5】の後に何を付け加えようか」とか、「それでも電話をした方がいいケースは考えられるか?」とか、ここまで書きながら考えていたあれこれが、全てではないにしても頭の外にいったん追い出される。

 電話が終わった後には、以前に頭の中にあったことが復元できているかを確認しなければならないし、原稿を書く気分を再び作り上げなければならない。

 筆者のように、それほど難しい内容を書いていない場合でも、電話はかなり迷惑だ。電話に直接出なくても、掛かってきただけで気が散る。

 もっと知性や感性を使う仕事をしていらっしゃるビジネスパーソンにとって、電話によって失われるアイデアや時間の損失は小さくないはずであり、これは社会的な損失でもある。

「電話はできるだけ使わない」というビジネスマナーが早急に確立され、広く普及することを切に願う。

 なお、直接声を聞く方が、感情がよく伝わるので、電話の会話が便利な場合も「まだ」たまにはある。筆者は今、原稿を1本書き終えたので、これから故郷にいる母親に電話することにする。彼女にとっては夕食前の暇な時間帯だし、たぶん子どもからの電話を喜ぶだろう。

 もちろんビジネスパーソンは、仕事のやりとりを母親との電話のようなものと混同してはいけない。