夏季は冷やして食べる
通年商品として人気に

 そこで生まれたのがソフト大福だ。切り餅にする際には障壁だった「硬くなりにくい」という特性を生かした独自製法で、粘りがあり、ふっくら、柔らかい大福餅を考案。冷蔵庫で冷やしても硬くなりにくく、夏季は冷たいまま食べられる通年商品として人気を集める。

地元特産のもち米の特性を生かした「ソフト大福」のヒットで雇用創出も実現地元産もち米の主力ブランド「はくちょうもち」。品質、収量共に定評がある(上)。切り餅をはじめ、もち米を使った甘酒、おかき、おこわなどさまざまな商品を開発。パッケージに札幌の著名切り絵師・藤倉英幸氏の作品を採用するなど、デザインにも注力(下)
●株式会社もち米の里ふうれん特産館 事業内容/餅・餅加工品製造・販売、道の駅指定管理、従業員数/43人、売上高/4億3200万円(2020年度)、所在地/北海道名寄市風連町西町334-2、電話/01655-3-2332、URL/mochigome.jp

 2008年には開業した「道の駅」の指定管理者となり、販路を拡大。ソフト大福のヒットを経て、ホイップクリームを入れた「クリーム大福」や、クラウドファンディングで寄付を募り作った、もち米と旭川市の高砂酒造の日本酒「国士無双」の酒かすをブレンドした甘酒など、新商品開発にも余念がない。

 20年は、コロナ禍で道の駅を休業した影響から売り上げ減を強いられたものの、通販を強化し、店頭の売り上げ減をカバー。また、もともと、インバウンド需要は小さかったため、外国人観光客減少の影響は軽微だという。21年5月に、隣接する士別市に新たな道の駅がオープンし、「周遊効果も狙いたい」(田口氏)と力強く語る。

 さらにコロナ禍による衛生観念の高まりを受け、個別包装に対応する製造設備を導入するなど、時代に合わせた改善・改革にも取り組む。ただし、「当社の基本はあくまでも農業」と田口氏。代表の堀江氏をはじめ生産者として、おいしいもち米加工品を届けるとともに、地元にいかに貢献していくかを大事にしたいと語る。

 農業の「6次産業化」の先駆者として、道内産業の振興をもけん引してきた同社。今後の新たな展開にも期待したい。

「しんきん経営情報」2021年7月号掲載、協力/北見信用金庫