マイクロチップとは何か
法改正で残る問題点

 マイクロチップは長さ1センチ前後、直径約2ミリの細長いカプセルのような形状をしている。ここに15けたの固有の番号と、飼い主の情報が登録されていて、専用の読み取り機を使って情報を読み込むことができる。何割かの人が筆者と同様の思い違いをしているようだが、GPSのような機能は備わっていない。あくまで識別を助けるための電子タグであり、首輪につける名札の進化形がマイクロチップである。
 
 これを専用の、少し針が太い注射器のような器具で犬や猫の首の後ろあたりに挿入する。施術は一瞬だが、飼い主の意向によっては麻酔を用いることもある。マイクロチップの表面は生体適合ガラスなどでできていて、投与後は皮下で定着するため健康面で問題はなく、また電磁波を発信する装置などでもない。日本獣医師会によると、副作用についてショック症状などの報告はないとのことである。投与される個体への負担が少ないため、哺乳類、鳥類、爬虫(はちゅう)類、両生類、魚類などにも使用できる点も特徴のひとつであろう。
 
 マイクロチップの寿命は約30年とされており、特に電池などを必要としてもいないため、犬や猫なら一度入れておけば生涯にわたって使用可能である。費用は個体の登録料と施術費用、合わせて約4000~7000円あたりが相場のようである。
 
 販売業者にマイクロチップ装着が義務付けられたのは、主にペットの遺棄を減らすことが目的とされている。遺棄をする悪質な業者も、マイクロチップが入っていれば、そう悪さはできまい…というところだろう。
 
 一方で、義務化によって起こりうるであろう問題もいくつか懸念されている。遺棄をするような悪質な業者は、そもそも義務化されてもマイクロチップを装着しないのではないか。海外では業者が皮下からチップを取り出す極めて悪質なケースもあった…などである。
 
 法は万能ではないので、100%の環境を整えることはできない。当然抜け穴を狙う犯罪者は想定されるが、環境省の姿勢を見る限りでは今回の改正法も「これが結論!」というよりは、「随時アップデートしていく」と感じられるので、今後さらなる改正が施されると信じ、期待したいところである。

震災で高まった注目
先進国にどこまで追いつけるかが課題

 マイクロチップへの注目がとみに高まってきたのは、東日本大震災以降であろう。

 震災時に飼い主不明となって保護されたペットたちは、首輪などの所有者明示が行われていれば、比較的スムーズに飼い主との再会が果たせただろう。所有者明示がマイクロチップによって行われていれば脱落して失われる心配はゼロに近く、急な災害時に離れ離れになってしまっても心強い味方となってくれる。
 
 諸外国ではペットに対するマイクロチップ装着が普及していて、スイスやフランスでは装着が義務付けられている。アメリカのペット関連番組を見ていても、「マイクロチップの装着」が当たり前のように語られている。
 
 日本は愛玩動物をケアする仕組み作りが諸外国に比べるとかなり遅れていて、国内のマイクロチップ装着頭数が年々増加してきているとはいえ、まだ十分な普及率に達しているとは言い難い。
 
 これには飼い主の意識の問題が、大きくかかわっているようである。