川を埋め立てたため
境界線があいまいに

 理由は、かつて銀座という場所が外堀や汐留川などが流れている水路の都市だったことが関係する。「数寄屋橋」「新橋」「京橋」という名称からも想像できるように、川の上には数多くの橋が架けられていた場所だった。

 それが戦後の復興や増加する自動車交通量の緩和のため、外堀、汐留川、京橋川を埋め立て、高架の東京高速道路が建設された。高架下には商業店舗が入るビルを建て、ビルの家賃で建設費と運営費を賄おうという計画のもと工事が進められた。

 ここにきて、ある問題に気づかされる。そこは銀座がある中央区、有楽町の千代田区、新橋の港区の3区が接する場所だった。地方自治法に基づくと、川の中心線が境界線となるはずだが、すでに埋め立ててしまったため、かつての川の上に建つことになった商業施設が、どこの区に属するのかはっきりしなくなってしまったのだ。

 店舗が3区にまたがっているケースも考えられた。これまでにも、境界線をどこで引くのか3区で話し合いの場が持たれた。しかし、結論を導きだすことは難しく、正式な住所がないまま今日に至っているというわけだ。

 国土地理院は銀座が属する中央区の面積を10.21平方キロメートルとしているが、中央区のホームページは10.115平方キロメートルと記載。高架下にできた土地を自区に含めていない。

 こうした経緯で、銀座に店舗を持っていると誰もが思いながらも、住所は銀座でないという状態が生まれたのである。もっともなかには「ウチの店は銀座」と堂々と言い切る人もいる。事実、店舗宛に郵便物を送ってもらう際、「中央区銀座△丁目先」という住所名でもきちんと手元に届いているという。