米国と北朝鮮は
相手の出方をうかがう状況

 米国のサリバン大統領補佐官(安保担当)が、「対話と対決のいずれにも準備ができていなければならない」と対話の可能性に触れた金正恩総書記の発言について「興味深いシグナル」と評したことを受けて22日、北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長は談話を発表した。同氏はその中で「米国はおそらく自らを慰める方向で夢解きを行っているのだろう」「間違った期待は自分たちを一層大きな失望に落とし込むものだ」と米国を批判した。

 金与正氏の談話は、「ワーキンググループ終了」という外交部の発表から5時間後に出されたものであるが、それに対する反応はなかった。「ワーキンググループが終了しても、どこかでその機能が働くことを北朝鮮が承知している」ということだろう。金与正氏は「その程度では誠意の表示にはならない」ということを言いたいのだろう。

 さらに23日、北朝鮮の李善権(イ・ソンゴン)外相は、「大切な時間を無駄にする無意味な米国との接触や、その可能性について一切考えていない」との談話を発表した。

 ソン・キム代表が訪韓した当初、北朝鮮への対応で前進があったように報じられていた。しかし、現実は米朝共に相手の出方をうかがっている状況に変化はなかったようである。

米国の特別代表を特別扱いし
日本のアジア大洋州局長を冷遇

 北朝鮮問題協議のため訪韓したソン・キム代表と外務省の船越健裕アジア大洋州局長に対する韓国政府の対応格差が話題となっている。

 ソン・キム代表は滞在中に北朝鮮核問題交渉の首席代表との協議を行ったほか、鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相、李仁栄統一相、崔領ジュン(チェ・ヨンジュン)同次官と面談、文大統領にも表敬した。こうした韓国側の丁重なもてなしの背景には、ソン・キム代表が北朝鮮対応で、お土産を持ってくることへの期待が大きいことを物語っている。

 しかし、船越局長については外相との会談もなかった。日韓関係は今、慰安婦問題、元徴用工問題、竹島の表記などの問題が山積しており、G7に出席した折も日韓首脳会談がなかったことが反映されているのであろう。文大統領が東京オリンピックの際に訪日を少しでも考えているのであれば、外相との会談はあったのではないか。船越局長への冷遇ぶりは、冷え込んだ日韓関係を象徴している。