人工知能(AI)は何か未来的で抽象的なものだと思っているのであれば、考え方を変え始めるべきだ。われわれは今、人工知能(AI)の転機を目の当たりにしている。クラウド上にあったAIの多くが、手元のスマートフォンや自動車に降りてきている。こうした「エッジ(末端)」――われわれがいる場所――にあるAIは、データセンターにあるAIよりも依然、はるかに性能が低いものの、われわれの日常生活にずっと大きな意味を持つようになる可能性がある。一つ例を挙げよう。アップルの音声アシスタント「Siri(シリ)」はこの秋から、iPhone(アイフォーン)上で音声を処理するようになる。現在はタイマー設定の要求でさえ、音声録音としてクラウドに送られている。そこで処理が行われ、返答がスマホに送り返されるようになっている。アップルは、スマホ上で処理を行えば、シリはもっと素早く返答できるようになると述べている。これが可能になるのは、iPhone XS(アイフォーン・テン・エス)以降のモデルだ。それら機種には、アップルが「ニューラルエンジン」と呼ぶ、AIのために開発されたプロセッサーが搭載されている。また、音声録音が離れた場所にある姿の見えないコンピューターに送信されないと分かれば、ユーザーももっと安心するかもしれない。