世界はそこまで五輪に興味がない

「示しがつかない」とはどういうことか。

 世界ではワクチン接種が進んで、スポーツイベントなどは観客を入れてノーマスクで大盛り上がりをしている。にもかかわらず、オリパラで観客席がガランとしていたら、全世界に日本のコロナ対策が進んでいないということが発信されてしまう。これは「恥」なので、観客を入れろというのだ。

 ただ、これはちょっと自意識過剰ではないか。日本人はやたらと「世界」という言葉を使って、外国人からどう見られるのかと気にするが、実はそこまで世界は五輪に関心がないからだ。自国開催の日本や周辺の韓国、中国くらいが大騒ぎをする「ローカルイベント」と言ってもいい。

 一般社団法人中央調査社が2019年11~12月に、アメリカ・イギリス・フランス・中国・韓国・タイの各国で約1000名を対象にした調査を見てみよう。「東京2020」について知っていたのは、韓国(91.6%)、中国(80.6%)がダントツに多い。欧米ではフランスで69.2%、イギリスで64.6%とまずまずだが、テレビ中継のために灼熱の五輪になっている…はずのアメリカでもなんと55.6%程度、親日国タイにいたっては41.9%と半数にも満たない。

 19年末といえば、まだコロナ禍も始まっていないので、日本のマスコミは「いよいよ今年はオリンピックイヤー!」などと盛り上がっていた。が、そういう報道を自国で目にした国は、やはり韓国(77.1%)、中国(66.4%)くらいで、フランス・イギリス・タイ・アメリカでは30~40%台にとどまっている。

 なぜ報道されないのか、というとそこまで人々の興味がないからだ。

若者の五輪離れが欧米で進行、欧米主導のイベントなのになぜ?

 前回のリオデジャネイロ五輪の際からアメリカでは、Z世代と呼ばわる若者を中心に「五輪離れ」が進行している。

「2016年の世論調査では、51%が五輪中継を熱心に見るつもりはないと答え、開催国を知っている回答者も半分以下だった」(ニューズウィーク5月30日)

 こういった傾向は開催国であれ変わらない。2012年のロンドン五輪の際、グローバル調査を行うイプソスが世界24カ国で「五輪に興味があるか」と調査をしたところ、開催国のイギリスでは50%以下だった。ちなみに、ここでも中国(82%)、韓国(78%)は関心が高かった。

 IOCなどを見てもわかるように、欧米主導で進めているはずのオリンピック運動で、なぜこんな矛盾した動きが起きてしまうのか。その謎を考える上で、ひとつの参考になるのが、劇作家・演出家の鴻上尚史氏の著書『不安を楽しめ!~ドン・キホーテのピアス16~』(扶桑社、2013年)だ。