序列激変#特別編Photo by Takahiro Tanoue

大企業の風評被害対策を強みに、立ち上げから5年で売り上げを7倍に伸ばそうとしているモノリス法律事務所。代表の河瀬季弁護士は元ITエンジニアであり、IT企業の経営者を経てから、弁護士に転身したという異色の経歴を持つ人物だ。特集『弁護士 司法書士 社労士 序列激変』(全19回)の特別編では、他にはまねのできないビジネスモデルの秘密を探った。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

創業から5年で売り上げが7倍
モノリス法律事務所が取り組む風評被害対策とは

――弁護士採用のためにホームページに載せている資料を見ると、2021年の売り上げ見込みは17年対比で約7倍になると示しています。どうやって成長を遂げてきたのですか。

 17年の創業から20年まで、売り上げの平均伸び率は前年比50%増加ほどで毎年推移してきました。もともと私一人で始めた法律事務所なので、最初の売り上げが少なかったこともありますが(笑)。

 モノリス法律事務所は、ITに特化した企業法務を扱う法律事務所です。「ITに特化した」という言葉には、二通りの意味があります。

 まず一つが、IT企業やベンチャー企業の顧問弁護士業務です。もう一つが、ITに弱い大企業に対するコンサルティングサービスです。大きく分類してしまえば、われわれはこの二つしかやっていません。

 顧問弁護士業務は、超労働集約型でありながら他の法律事務所からのリプレースが難しい仕事なので、売り上げが毎年10%でも成長すれば一般的に上出来といえます。

 私も20年前からIT業界にいるから分かりますが、中でもIT企業やベンチャー企業の顧問弁護士のマーケットは小さく、それなりの数の法律事務所が参入しているため、すでにレッドオーシャンと化しています。

 われわれの特徴は、後者の大企業向けのIT案件にあります。上場企業でいえば、クライアントには日本電産や三井住友海上火災保険、幸楽苑ホールディングスなどがいます。

 このような大企業では、顧問弁護士を担うのは製造業や保険業といった特定の業界に強い弁護士です。ただ、同時にITを専門に担当する弁護士も必要になります。われわれが目指すポジションは、まさにここ。この市場はブルーオーシャンであり、成長率が絶対的に高い領域です。

 特に大企業からのIT案件の中で、マーケットが顕在化していて提供できるサービスをパッケージ化しやすいのが風評被害対策です。これが、われわれの売り上げを最も支えています。

――狙う市場もそうですが、他の法律事務所とは取り組み方からして違うのでしょうか。

 例えば、医薬品の広告が薬機法違反していないかをチェックするという業務一つを挙げても、一般的な法律事務所では、「何か分からないことがあったら弁護士に相談しに来てください」というかたちの商材を提供しています。

 ただ、それでは相談に来ないわけです。企業からすると、弁護士に相談するのがそもそも面倒で、相談したことしか回答してくれないこともあり使い勝手が悪い。法律事務所にとっても、売り上げは少なく「稼働時間×単価」の分しか発生しません。

 われわれが取りに行こうとするIT案件は、「ITに関する契約書を書く」という労働集約型の業務を単発で引き受けるのではなく、ソリューションの設計部分から本気で考えるというものです。