瀬戸際の銀行・フィンテック連携 #1
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銀行とフィンテック企業は今、安全なデータ連携を可能にする「オープンAPI」の契約交渉を進めている。その交渉の遅れの原因や各社の思惑に、特集「瀬戸際の銀行・フィンテック連携」(全5回)で迫っていく。#1では、昨年12月のある会合において、金融庁の発言が銀行界で物議を醸した訳に焦点を絞った。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

APIの契約期限を実質前倒し!
金融庁の通達で焦る銀行界

 相互理解が足りない――。業界関係者にそう評される関係性の中で、銀行界とフィンテック(金融とテクノロジーの融合)企業は、共通のゴールに向かって交渉を進めてきた。両者のサービスの安全なデータ連携を可能にする仕組みといわれる、「オープンAPI」の契約だ。

 この契約を結ぶ期限は、2017年5月に成立した改正銀行法によって20年5月末までと定められた。だが昨年12月6日、全国銀行協会が開催したオープンAPIに関する説明会の場で、監督官庁である金融庁が銀行に対し、20年1月末までに契約を結ぶか否かを経営判断してほしいと通達。期限が「実質4カ月前倒し」になる事態が起こり、業界で焦りが深まっている。

金融庁
金融庁は銀行に対して、契約を結ぶ期限を前倒しして経営判断を下せと通達。業界で焦りが深まっている Photo:Diamond

 そもそも金融界が目指すオープンAPIとは何か。詳しくは特集#2【銀行の命運を握る「オープンAPI」とは?現代の必須知識をカンタン解説】で説明するが、フィンテック企業が顧客からログインIDとパスワードを預かることなく、銀行の口座情報などのデータにアクセスできる仕組みだ。

 かねてフィンテック企業が銀行データにアクセスする場合、顧客からIDとパスワードを預かってログインする「スクレイピング」と呼ばれる手法が一般的だった。このスクレイピングでは、IDとパスワードの漏えいリスクや、アクセスが集中して「銀行でシステムダウンが起きる」(ITベンダー幹部)リスクが懸念されていたが、オープンAPIを導入することにより、それらの軽減が見込まれている。

 このスクレイピングからオープンAPIの世界に移行するために、銀行とフィンテック企業は交渉を続け、契約の中身を詰めてきた。その締結を突然、金融庁が1月中と迫ったのはなぜなのか。背景にあるのが、銀行・フィンテック企業間の契約交渉に迫る二つの問題だ。