「心理的安全性」提唱のハーバード教授が、著書『恐れのない組織』に込めた真意エイミー・エドモンドソン教授 (C)Evgenia Eliseeva for Harvard Business School

「心理的安全性」の提唱者として知られる、ハーバードビジネススクールのエイミー・エドモンドソン教授。エドモンドソン教授の最新刊『恐れのない組織』は今年2月に日本語版が出版され、ベストセラーとなっている。コロナ禍で不確実な状況が続く中、エドモンドソン教授の著書は世界中のビジネスリーダーから高い支持を得ているのだ。タイトルに込めた思いとは。日本語版『恐れのない組織』出版後、初のインタビューをお届けする。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)

『恐れのない組織』の著者が語る
タイトルに込めた真意とは?

佐藤 『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』が現在、日本でベストセラーとなっています。エドモンドソン教授が提唱した「心理的安全性」が、コロナ禍で注目されているのはなぜだと思いますか。

エドモンドソン パンデミック下で世界中の人々が「不確実性の時代」の現実を実感しているからだと思います。

 新型コロナウイルスの感染拡大が始まるまでは、多くの人々が「この先もきっと今日のような日の繰り返しだろう」と考え、「目の前の仕事をひたすら頑張ればよいのだ」と思い込んでいました。しかしパンデミックが起こり、状況は一変しました。これからは、経験したこともないような新しい環境や先の見えない環境で、問題解決をしたり、新しいことに挑戦したりしなくてはなりません。まさにVUCA(ブーカ/変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の英単語の頭文字を取った略語)の時代が到来したのです。

 企業がVUCAの世界を生き抜くためには、肩書や職責にかかわらず、全ての従業員の意見に耳を傾けることが必須です。いまは、誰が、どこで、会社に大きな利益をもたらすアイデアや改善案を思い付くか分からない時代です。パンデミック後の世界で成功するには、一人ひとりの社員のアイデアを広く取り入れることがますます重要になってきているのです。

 そして、あらゆる階層の人々の意見を吸い上げるためには、「心理的安全性」の創出が欠かせません。だからこそ心理的安全性が注目されているのだと思います。

佐藤 『恐れのない組織』は日本だけではなく、他の国でもベストセラーになっているそうですね。「恐れのない組織」というタイトルが、不安に満ちた世界を生きる人々に特に響いたのではないでしょうか。

エドモンドソン 『恐れのない組織』はすでに15の言語に翻訳されていますが、スウェーデン、オランダ、ポーランド、ドイツなど、多くの国々の読者から反響がありました。コロナ禍でたくさんの人々が心理的安全性について学びたいと思っていることを実感しています。

 ところで「恐れのない組織」というタイトルについては、誤解されることがあるので、ここで改めてその意味するところを説明させてください。