金融機関へ支払う利息よりも住宅ローン減税による節税額の方が多いという「逆ざや」現象。空前の低金利によって生み出された錬金術がいよいよ打ち切られようとしている。特集『五輪後の不動産・マンション』(全12回)の#7では、錬金術の詳細を解説する。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
不動産仲介業者の殺し文句
「今年が買い時ですよ」
7月下旬の休日。念願のマイホームを購入しようと、一組の夫婦が東京都内の独立系の戸建て仲介業者を訪れた。世帯年収が1000万円を超える、いわゆるパワーカップルだ。
この業者の顧客層では上客だったのか、応対した営業担当者は満面の笑みで、立て板に水のように営業トークを繰り広げた。夫婦が挙げた条件に見合った5000万円台以上の物件をいくつか紹介した後、問わず語りに住宅ローンの返済シミュレーションを始めた。
複数の金融機関の金利をまとめた表を見せながら、「今は空前の低金利ですから、返済額を抑えられますよ」とニコリ。毎月の返済額の説明にさりげなく殺し文句を添えた。
「さらに住宅ローン減税のことを考えれば、今年が買い時です。『逆ざや』って聞いたことありますか?」