五輪後の不動産・マンション#3Photo by Masami Usui

不動産売買で競り勝って荒稼ぎするヒューリックは銀座の物件を買いまくり「銀座の大家」の道を突き進んできた。しかしそこに障壁が立ちはだかる。銀座一等地で他のビルの賃貸は埋まっても、同社のビルはなかなか埋まらないのだ。特集『五輪後の不動産・マンション』(全12回)の#3では、立ちはだかる障壁の実態に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

銀座5丁目並木通り
一等地で「For Rent」

 旧富士銀行(現みずほフィナンシャルグループ)系列の不動産会社ヒューリックは、不動産業界で三菱地所や三井不動産、住友不動産といった財閥系大手の背中を追う勢いのある存在だ。大手が大規模ビルの開発に注力するのに対し、中小ビルが得意で、東京・銀座が重点エリアの一つになっている。

 銀座・有楽町エリアで保有する不動産は約30。強気の姿勢で買いまくり、「銀座の大家」への道を突き進んできたのである。その銀座では開発・建て替え物件が10以上進行している。

 目下の銀座はコロナ禍の影響で夜の街としては活況を失い、昼の街としてもインバウンド客が消えてテナントの店舗営業は厳しくなった。ビル経営側にとって空室状況は過去最悪のレベルだ。

 それでもそこは銀座。「世界的なハイブランドが姿を消すことはなかった」と増田不動産研究所の増田富夫所長は言う。

 一度閉店して環境が良くなってから戻ってこようとしても、元が好立地であればあるほど次の出店先は悪くなるが故、耐え忍んだ。こんな時期であっても入居意欲を持ち、出店を決めているところもある。

 銀座5~7丁目の並木通り沿いでは今春、ルイ・ヴィトンがリニューアルオープン、グッチが新規出店をした。他のビルにもハイブランドが入る予定だ。

 そんな並木通りの5丁目に「For Rent」の文字がでかでかと張り出されたビルがある。ヒューリックが所有する「ヒューリック銀座五丁目並木通」。地下1階・地上9階のビルで、地下1階から地上4階までが空室状態となっており、入居募集をしている。

 一等地にありながら、なぜ空室のままなのか。