最近の節税策の一大トレンドともいえた、マンション取得時の消費税還付を利用した節税策。ところが、あまりに露骨な節税手段が国税の逆鱗に触れ、節税とは無関係の事業者までそのとばっちりを受ける事態となっている。特集『最強の節税』(全22回)の#11では、あまたの消費税還付指南業者と国税の壮大なるいたちごっこの全貌とその結末を明らかにする。(税理士 吉澤 大)
えげつなさ満載!マンション消費税還付という
国税vs節税指南業者の大迷惑ないたちごっこの結末は
2020年5月。ある税理士が約8億2700万円の所得を隠し約2億円の脱税で告発された、と報道されました。この税理士は「マンション消費税還付」の指南役で、指南報酬で荒稼ぎしたカネを脱税していたのです。
マンション消費税還付とは投資用マンションの購入時の消費税還付をネタにした節税スキームです。最近の節税策の一大トレンドで、この分野で活動する“節税指南業者”は無数にいました。そしてこのスキームはこの十数年、あの手この手の節税スキームを考案して顧客に提案する指南業者と、それを封じようとする国税庁との間で繰り広げられる、実にえげつない“仁義なきいたちごっこ”の舞台となってきました。
そもそも、なぜ消費税還付で節税ができるのか。順を追って説明していきましょう。
事業者は、売り上げなどに伴い「預かった消費税額」と、仕入れなどに伴い「支払った消費税額」の差額を国に納付することで精算しています。預かった消費税額よりも支払った消費税額の方が多い場合、差額が事業者に還付されます。
例えば、ある課税期間に1億円でオフィスビルを建築し、賃料1000万円(共に税抜き)を受け取った場合、賃料に伴い預かった消費税100万円(1000万円×10%)とオフィスビルの購入対価に伴い支払った消費税1000万円(1億円×10%)の差額である900万円が還付されるわけです。
しかし、これが1億円で建てたマンションだと、消費税は還付されません。支払った消費税を控除できるのは、消費税が対象としている資産の譲渡や役務提供などによる売り上げである「課税売り上げ」を獲得するために費やした支出に伴うもののみだからです。居住用建物の賃料は消費税が非課税となる「非課税売り上げ」です。よって賃料が非課税である居住用マンションの購入対価に伴い支払った消費税は、非課税売り上げを獲得するための支出に係るものであり消費税の控除は不可能なのです。
しかし、その不可能を可能にする“特別な方法”があるのです。