第3に、多品種少量生産を実現することで、1社に依存しない体制を構築していることだ。産業用機器市場においては、コロナ禍では人工呼吸器といった医療分野からの受注が増加し、地上デジタルテレビ放送が開始した際には放送用機器関連のニーズが増えるなど、時代によって波があるが、同社の取引先は年間150社にも及ぶ。幅広い業種・業界に対応してきた蓄積を生かし、経営の安定化を実現している。
取引先の開拓は、「お客さまや部品の仕入れ先企業さまからの紹介が大半です」と中川氏。スピーディーな対応や品質の高さは業界でも定評があり、滋賀県長浜市に構える二つの工場に、最先端の全自動両端圧着機や各種測定器などを備え、量産に対応できる点も同社の強みだ。
福利厚生の充実に取り組み
働きやすい環境を整備
●福岡産業株式会社 事業内容/ワイヤーハーネス加工、電子部材販売、従業員数/75人、売上高/7億円(2020年度)、所在地/滋賀県長浜市神照町888-6、電話/0749-63-2494、URL/fukuoka-sangyo.co.jp
むろん、手作業工程が多いワイヤーハーネス加工については、優秀な人材が要となる。同社では従業員75人のうち、細かい作業を得意とする女性パート従業員が、50人超を占める。「長く働いていただけるよう、社員旅行や懇親会など福利厚生の充実には注力しています」と中川氏。より働きやすい環境を実現するため、広い休憩スペース、食堂を備えた新工場も、9月末完成を目指し建設中だ。さらに約70人の在宅ワーカー、協力企業も擁し、地域の雇用創出にも貢献している。
独自の技術力、立ち位置で成長を遂げてきた同社だが、中川氏が最も大事にしている経営方針・行動指針は「挨拶、コミュニケーション」だという。顧客、従業員、地域とのつながりも大切に、“小粒でもピリッと辛い魅力ある企業”を標榜する同社。今後の成長にも期待大だ。
(「しんきん経営情報」2021年8月号掲載、協力/長浜信用金庫)