生前贈与してもらう絶好のチャンスは
住宅購入や結婚・出産・子どもの入学時!

 財産のある老齢世代から消費を必要とする若い世代へと資産の移転を早め、消費を促して経済を活性化させよう……、そんな目的を主として創設されたのが、直系尊属からの贈与に対する非課税制度だ。直系尊属とは、直系の血族で自分より上の世代、父母、祖父母、曽祖父母などとなる。

(1)直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

 自己の居住用として、新築住宅用家屋を取得したり、増改築等の費用に充てたりするため、直系尊属から贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば、贈与税が限度額まで非課税となる制度である。

 例えば、令和2(2020)年4月1日~令和3(2021)年12月31日の間に契約締結した、消費税10%の住宅家屋を新築。祖父から購入資金として贈与を受けたとしよう。その新築家屋が省エネ等住宅であれば1500万円まで、省エネ等住宅以外でも1000万円まで、贈与税が非課税となる。

(2)直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税

 平成27(2015)年4月1日から令和5(2023)年3月31日までの間に、20歳以上50歳未満(令和4〔2022〕年4月1日より18歳以上50歳未満)の人が、結婚・子育て資金に充てるため、直系尊属から一括贈与を受けたとき、一定の要件に当てはまれば、贈与税が非課税となる制度である。

 この制度では、金融機関との契約が必要となり、以下の結婚・子育て資金の一括贈与が対象となる。

 1.信託受益権を付与された場合
 2.書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預け入れをした場合
 3.書面による贈与によって取得した金銭等で証券会社等から有価証券を購入した場合

 取扱金融機関に「結婚・子育て資金非課税申告書」を提出することで、上記の価額のうち1000万円まで贈与税が非課税となる(ただし、結婚資金への贈与については300万円が限度額)。

「信託受益権を付与」とは、例えばこんなケースである。父(委託者)が息子(受益者)に奨学金信託を付与し、息子はその子ども(父にとっては孫)のうち誰の奨学金に充てるかは自由と設定。ただし、受益者は信託契約に従い信託財産を管理するので、用途を好き勝手には決められない。

 結婚資金なら、挙式費用、衣装代等の婚礼(結婚披露)費用、家賃、敷金等の新居費用、転居費用。妊娠・出産・育児に要する資金なら、不妊治療・妊婦健診に要する費用、分べん費等・産後ケアに要する費用、子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料が対象となる。

(3)直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税

 平成25(2013)年4月1日から令和5(2023)年3月31日までの間に、30歳未満の人が、教育資金に充てるため、直系尊属から一括贈与を受けたとき、一定の要件に当てはまれば、贈与税が非課税となる制度である。

(2)同様、金融機関との契約が必要で、対象となる一括贈与方法も(2)の1.~3.と同じ。取扱金融機関に提出する書類は「教育資金非課税申告書」。教育資金として直系尊属から一括贈与された価額のうち1500万円まで贈与税が非課税となる(ただし、学校等以外について支払われる金銭は500万円が限度額)。

 教育資金は、学校等(幼稚園、小・中学校、高等学校、大学・大学院、専修学校・各種学校、一定の外国の教育施設、認定こども園、保育所など)の入学・入園料、授業料、保育料、施設設備費、入学試験の検定料など。学用品購入費、修学旅行費や学校給食費、通学定期券代、留学渡航費なども含まれる。学習塾やスポーツ教室などの教育費も対象だ。

(1)~(3)の制度ともに、まとまった金額を非課税枠内で生前贈与できることにメリットがある。ただし、用途や要件が詳細に定められ、注意点も多い。また、契約期間内に贈与者が死亡すると、場合によっては管理残額に対して相続税が課せられる。特に(3)は、管理残額の計算方法や条件がやや複雑なこともデメリットとして指摘されている。

 むしろ、必要な資金発生の都度、贈与される「都度贈与」のほうが使い勝手が良いかもしれない。通常、必要と認められる生活費や教育費等を直系血族(配偶者、親、祖父母、兄弟姉妹など)から贈与されるなら、贈与税は課せられない。例えば、入学費と学費計1000万円を祖父が払っても贈与税は非課税。ただし、それを貯金したり、車購入など他の目的に使ったりすれば、贈与税が課せられる。

 また、「暦年贈与」もよく知られる、生前贈与の王道のような方法である。「暦年贈与」は、毎年1月1日~12月31日の年間(暦年)で、贈与額が110万円の基礎控除内なら贈与税が非課税となる。

 ところが、この「暦年贈与」が、相続税の節税対策や生前贈与に利用できなくなるかもしれない。