動画戦国時代、海外勢とスクリーン争奪戦

 TVerがユーザー数を伸ばしてきた背景には、コネクテッドTV(CTV、インターネットで接続されたテレビ)の普及もある。テレビ画面でTVerを視聴するユーザーは22.7%まで急増していて、パソコンを使って見るユーザーの割合(20.3%)を超えている。よって、CTVでもTVerの広告を流す取り組みを本格展開させている。

 ただ、CTVが普及するということは、ゲームや動画など他のサービスにもテレビの画面を明け渡すということなので、TVerだけが優位というわけではない。

 テレビ局を取り巻く環境は、ここ数年で目まぐるしく変わっている。YouTubeで流れる無料動画だけにとどまらず、「ネットフリックス」や米アマゾン・ドット・コムの有料会員制サービス「アマゾン・プライム」などのサブスクリプションサービスに登録し、有料で動画を見る人も格段に増えた。

 定額動画配信市場で今ダントツなのはネットフリックスで、2年連続でトップシェアを誇る(参照)。ネットフリックスの日本上陸は、TVerがスタートする1カ月前の15年9月だったが、昨年時点で日本での有料会員は500万人を突破。ネットフリックスは、世界中でスクリーンタイム(テレビ画面の占有率)に占める割合を増加させることを目標に掲げていて、テレビ局にとって大きな脅威だ。

 このような環境の中でTVerが、YouTubeとも違う、大衆のための無料動画サービスとしてポジションを確立するためには、コンテンツや機能を整備・充実していくことだけでなく、テレビ業界が一枚岩になることが重要ではないだろうか。

 テレビ番組をネットで見る場合、TVer以外にもサービスが乱立していて一般ユーザーだけでなく、テレビ局関係者でさえ「わかりにくい」と話す。日本テレビの「Hulu(フールー)」、TBS、テレビ東京らの「Paravi(パラビ)」、テレビ朝日の「TELASA(テラサ)」、フジテレビの「FODプレミアム」…。各局がバラバラにサービスを用意していて、アーカイブを含めて全局をまとめて見られるサービスは今のところない。

 また、TVerでは、どうしてもキー局のドラマやバラエティーばかりが見られてしまうので、地方局とどう連携していくかも課題になっている。さらに、キー局プライム帯(19~23時)の同時配信なども近い将来スタートする予定で、今後も新たな課題や壁にぶつかるだろう。

 TVerはその一歩先を見通しながら、未来のテレビの形を模索しているようだ。